チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ

2009/5/31 シネマスクエアとうきゅう ★★

この写真だと見にくいが、「字幕位置 下」の表記があって親切だ。もっとも今の字幕は見にくいことはめったにないし、前の人の頭が気になる映画館も少なくなったからね。って、ミラノだとまだそういう席がいくつかあるのかも(私の場合はかなり前の方で観るのでほとんど大丈夫なのだが)。『从印度到中国』というのは、中国での公開題名なのかしら。最初から、中国のマーケットも考えて作っているわけか。

■勘違いと本気モードで為せば成る、わきゃない

『スラムドッグ$ミリオネア』で一躍脚光を浴びた感のあるボリウッド映画だが、そしてこれもハリウッド資本がかんではいる(ワーナー・ブラザースのインド支社が製作)が、よりインド映画らしさが出た一篇となっている(って憶測です)。

世界最多製作本数を誇るインド映画は、日本でも十一年前に『ムトゥ 踊るマハラジャ』が話題になったが、あの集団で歌って踊ってが何かというと入ってくるパターンは同じ(『スラムドッグ$ミリオネア』にも、最後だけだったがこれがオマケになっていた)、きっとかなりの映画がこうなのかも。

その中でもこれは、主人公が中国まで行って故宮や万里の長城で撮影もしてきた大作なのではないか。感覚的には、昔の日本の『クレイジーメキシコ大作戦』や『ハワイの若大将』的なノリで作ったような気がするのだが(当時は日本もシリーズ物の映画を量産してたからね)。

前半はモロお馬鹿映画。主人公の料理人、シドゥの勘違いに加え、運も目一杯味方してくれて劉勝の生まれ代わりに祭り上げられるが、結局それは簡単にメッキが剥げて、で、それから本気モードになるのはいいのだが、必死でカンフー修行をしたら勝てちゃった、ってそれはないでしょ(長年修練してきた野菜切りの動きを取り入れたからというもっともらしい説明はあったが)。

携帯翻訳機(これで中国人との会話もOK)や防弾+パラシュート傘といった安直な新兵器(じゃなくて新製品でした)まで出てきて楽しませてくれるが、面白さが馬鹿らしさに勝つには至らず。

育ててくれた恩人の死や、北条に殺されかけて記憶を失っていた中国の警官や敵味方に分かれてしまった双子の娘(彼の妻はインド人なのだ)の話など、盛り沢山だが中身は薄い。

途中Intermissionの文字があった。日本では休みなしの通し上映だからギャグと思ってしまったが、ここは普通に休憩になるんだろう。

まだまだインド映画は新鮮なので、ショーとして観るだけでも退屈することはないのだが(でも長いよ)、だけど次回はもっと違った種類の映画を観たいものだ。

原題:Chandni Chowk to China

2009年 155分 インド、アメリカ シネスコサイズ 配給:ワーナー・ブラザース映画 日本語字幕:松岡環

監督:ニキル・アドヴァーニー アクション指導:ディーディー・クー 製作:ラメーシュ・シッピー、ムケーシュ・タルレージャー、ローハン・シッピー 脚本:シュリーダル・ラーガヴァン、ラジャット・アローラ 撮影:ヒンマーン・ダミージャー 振付:ポニー・ヴェルマ 作詞:ラジャト・アローラー 音楽:シャンカル・マハデヴァン、イフサーン・ノーラニー、ロイ・メンドンサー

出演:アクシャイ・クマール(シドゥ)、ディーピカー・パードゥコーン(サキ、ミャオミャオ)、ミトゥン・チャクラバルティー(親方)、ランヴィール・ショウリー(ハシ道士/チョップスティック)、ゴードン・リュウ[劉家輝](北条)、ロジャー・ユアン(チャン刑事)

ザ・スピリット

新宿ミラノ2 ★★

■見所は不死身同士のなまくら殴り合い!?

予告篇はものすごく艶っぽく、そして謎めいても見えたのだが、それは表面的なもので、骨のない無残な作品だった。

で、私といえば、こういうヒーローものが五万とあるから『ウオッチメン』のような作品が出て来るのか、と途中からまったく違うことを考えながら、気もそぞろで観ていたのだった。

モノトーンに赤を効果的に配した映像は確かにアメコミ風な感覚に繋がるものがあるが、中身がなくてはそれまでだろう。それにこれは『シン・シティ』(2005)ですでに観ているものだし。って、別に新しい作風にしろと言っているんじゃないんだけどね。

セントラル・シティを恋人と言ってはばからないスピリットは、今日も宿敵オクトパスと戦いを続けていた。街を恋人と言うのは、モノローグでのことなのだけど、けど、しつこいくらいにスピリットはこれを繰り返すんだよね。「この街のおかげで生きられる。必要な物は何でも与えてくれる」ってなにさ。意味不明だってば。ただそう言われただけじゃ。

これはあとでわかることなのだが、この二人はある実験の結果、不死身になってしまったようなのだ。といっても一応傷は負って、スピリットの場合は外科医で恋人らしきエレンに手当をしてもらうのだけど、スピリットがオクトパスと戦うのは手当をして欲しいのかとも、ってまたヘンなこと考えちゃてたんだよね。

オクトパスもそのことを楽しんでいるかのように(その秘密を知っていたからか)、二人は文字通り最初の対決場面で、沈没した古い貨物船から引き上げた物をめぐって文字通りの泥仕合を繰り広げるのだが、これがなんとも白ける殴り合いなのだ。不死身同士の殴り合いを見せられてもなぁ。

まあ、これはまだ最初だからいいのだけど、最後など、スピリットは防弾チョッキを着込んでた、ってあんまりな。不死身同士のライバルだって(それに二人は双子のようなものなのだから)見せ方によってはいくらでも面白くなるのではないかと思うのだが、これがまったくつまらない。

ここにもうひとり絡んでくるのが、上昇志向が強くキラキラしたものが好きなサンド・サレフという宝石泥棒で、手に入れたいものがあって汚れたこの街に戻ったという彼女は、なんとスピリットの幼なじみで初恋の相手だった。

これは昔の映像で語られるから現在にもそれなりの影を落としているってことなんだろうけど、そこらへんがまったくといっていいほど見えてこないのだ。最後にスピリットとサンドのキスシーンもあるのだが、それ以上にはならない。スピリットの「昔の恋人だ」というこの割り切りがどうにもわからないのだ。

オクトパスの部下のクロ-ン君たちなど、なかなか面白いキャラも出てくるのだが、本筋でずっこけているからちっとも楽しめない。

オクトパスの助手のスカーレット・ヨハンソン(あら、彼女だけ本名で書いちゃった)もいいところなし。というか、コスプレショーができればいいや、くらいの気持ちだったのか(オクトパスもナチス親衛隊のコスプレに嬉々としていたから、この二人はコスプレ繋がりなのか?)。最後に、バラバラになったオクトパスの指(まだ生きてるのだ)を拾って消えてしまったから、見せ場は次回作のお楽しみなのかしら。え、次回作!? どうしよう。

原題:The Sprit

2008年 103分 アメリカ シネスコサイズ 配給:ワーナー・ブラザース映画 日本語字幕:林完治

監督・脚本:フランク・ミラー 製作:デボラ・デル・プレト、ジジ・プリッツカー、マイケル・E・ウスラン 製作総指揮:ベンジャミン・メルニカー、スティーヴン・マイヤー、ウィリアム・リシャック、マイケル・パセオネック、マイケル・バーンズ 原作:ウィル・アイズナー 撮影:ビル・ポープ 視覚効果スーパーバイザー:スチュー・マシュウィッツアートディレクション:ロザリオ・プロベンサ 衣装デザイン:マイケル・デニソン 編集:グレゴリー・ナスバウム 音楽:デヴィッド・ニューマン

出演:ガブリエル・マクト(スピリット、コルト刑事)、サミュエル・L・ジャクソン(オクトパス)、エヴァ・メンデス(サンド・サレフ)、スカーレット・ヨハンソン(シルケン・フロス)、ジェイミー・キング(ローレライ)、サラ・ポールソン(エレン)、ダン・ローリア(ドーラン)、パス・ベガ(プラスター・オブ・ハリス)、ルイス・ロンバルディ(フォボス)、スタナ・カティック(モーゲンスターン)、フランク・ミラー、エリック・バルフォー、ダニエル・ハバート、ジョニー・シモンズ、セイチェル・ガブリエル、マイケル・ミルホーン