トワイライト 初恋

楽天地シネマズ錦糸町シネマ7 ★★★

■息づかいが聞こえてくる

新感覚映画とでも呼びたくなるような、今までにない雰囲気がある映画だった。が、何がそうなのかと言われると、どう表現していいのか見当がつかなくなってしまう。多分私が旧式人間だからなんだろう。

全体に青を基調とした画面で、と表面的なことなら書けても、後が続かない。もしかしたらこれは私が今の若者を、すでにかなりの部分で理解できなくなっていることとつながっている気がする。

主人公の二人も、私の感覚だと美形というのとはちょっと違うのだが、まあ、そんなことはどうでもいいか。

脱線気味で書き始めてしまったが、話は単純だ。ヴァンパイアと人間の恋という奇異さはあるが、そしてそのヴァンパイアの説明に少し時間を使っているが(少女にとっては謎なんだから当然なのだが)、それを削ってしまうとどこにでもあるような話だろうか。

ベラ・スワンはママの結婚で、雨の多い町フォークスで警察署長をしているパパのところに戻ってきた転校生だ。新しい学校にも慣れ、友達も出来、順調なスタートをきるが、学校では別行動を取りがちな「アタックするだけ無駄」らしいエドワード・カレンに興味を持つ。

というか露骨に避けられてしまうのだが、なるほどねー、かえってハートに火がついてしまったのね。そして、無視されているはずだったのに、車の暴走から身を守ってくれたことで、エドワードの飛び抜けた身体能力と彼の秘めた想いを知ることとなる。

別行動はエドワードがヴァンパイアだからで、なるべく一族でまとまっているからだし、避けるのは「君の心だけが読めない」からと説明されるけど、じゃあ何で人間界にいるんだってことになるし、「君の心だけが読めない」というのも、どう考えても詐欺のような説明である。

矛盾だらけなのは、ヴァンパイア物の宿命だが、エドワードの情熱と抑制を際立たせようとしているからだろうか。そして「君の心だけが読めない」からこそ(心が読めちゃったら恋はできないような気がする)、ベラはエドワードにとっての初恋(「初恋」は邦題だけにあるにしても)となったのだろう。

ベラの方はもうすっかりその気になっていて、血を吸われてもかまわないと思っているのに、エドワードはあくまでベラを禁忌の対象と位置づけようとする。吸血は動物だけで人間には手を出さないベジタリアン(はぁ?)っていうのだけれど、自分だってヴァンパイアにされたわけだし、ベラも望んでいることなのだ。本当に命取りになるならともかく、これはあまり説得力がない。

欠点はあるが、情熱と抑制が交差する展開はなかなかだ。このエドワードの自制心が、若い女性観客にはたまらないのかも(そういや観客の九割が若い女性だった)。二人の踊りが近くて(他の場面でも)、息づかいが聞こえそうで胸が苦しくなってくる。ベラも一族になってくれれば二人の恋は永遠になるのでは、と思うが、もしかしたらそれだと……って映画では何も言っていないのだけど、それは続編待ちなのだろうか。

人間の血を吸う正統派?吸血鬼のグループも登場させたことだし、だから単にそのうちの一人がベラに目をつけた程度では面白味がないのだが、これは伏線貼りすぎの上で登場させたにしては、案外あっさりかたがついてしまう(ヴァンパイア流草野球や忍者もどきの木登り場面の方が印象に残ってるくらいだから)。

それにしてもうまいことバンパイア物を、学園ドラマにアレンジしてしまったっものである。古臭い十字架や棺桶に古城、ニンニクや十字架も一掃。むろん誰も燕尾服などは着ていない。雨の多いフォークスを拠点にした設定にはしてあるが、太陽の光に当たったからといって灰になったりはせず、キラキラ耀いちゃうんだから。

★三つは甘めだが、次回作の期待料込みってことで。

  

原題:Twilight

2008年 122分 アメリカ シネスコサイズ 配給:アスミック・エース、角川エンタテインメント 日本語字幕:石田泰子

監督:キャサリン・ハードウィック 製作:マーク・モーガン、グレッグ・ムーラディアン、ウィック・ゴッドフレイ 製作総指揮:カレン・ローゼンフェルト、マーティ・ボーウェン、ガイ・オゼアリー、ミシェル・インペラート・スタービル 原作:ステファニー・メイヤー『トワイライト』 脚本:メリッサ・ローゼンバーグ 撮影:エリオット・デイヴィス 衣装デザイン:ウェンディ・チャック 編集:ナンシー・リチャードソン 音楽:カーター・バーウェル 音楽監修:アレクサンドラ・パットサヴァス

出演:クリステン・スチュワート(ベラ・スワン)、ロバート・パティンソン(エドワード・カレン)、ビリー・バーク(チャーリー・スワン/ベラの父、警察官)、ピーター・ファシネリ(ドクター・カーライル・カレン/エドワードの養父、医師)、エリザベス・リーサー(エズミ・カレン)、ニッキー・リード(ロザリー・ヘイル)、アシュリー・グリーン(アリス・カレン)、ジャクソン・ラスボーン(ジャスパー・ヘイル)、ケラン・ラッツ(エメット・カレン)、キャム・ギガンデット(ジェームズ)、エディ・ガテギ(ローラン)、レイチェル・レフィブレ(ヴィクトリア)、アナ・ケンドリック(ジェシカ・スタンリー)、テイラー・ロートナー(ジェイコブ・ブラック)、ジル・バーミンガム(ビリー・ブラック)、サラ・クラーク、クリスチャン・セラトス、ジャスティン・チョーン、マイケル・ウェルチ、ホセ・ズニーガ、ネッド・ベラミー