ドリームガールズ

TOHOシネマズ錦糸町-2 ★★★☆

■60~70年代の音楽ビジネス(モータウンレコード)の世界をミュージカルに凝縮

エフィー・ホワイト(ジェニファー・ハドソン)、ディーナ・ジョーンズ(ビヨンセ・ノウルズ)、ローレル・ロビンソン(アニカ・ノニ・ローズ)の仲良し3人組はドリーメッツを結成しデトロイトでタレントコンテストに出場するが、中古車販売会社のカーティス・テイラーJr.(ジェイミー・フォックス)の裏取引で優勝を逃してしまう。カーティスは彼女たちに人気歌手ジミー・アーリー(エディ・マーフィー)のバックコーラスにならないかと持ちかける。

ツアーにあけくれ、女癖の悪いジミーに夢中になってしまうローレルや、マンネリ気味のジミーの様子、エフィーの兄でドリーメッツをある部分でリードしていた作曲家のC.C.ホワイト(キース・ロビンソン)がジミーに曲を売り込んだり、白人に曲(「キャディラック」)をパクられる事件があったり、だからDJには金を掴まさなくては……と、映画は快調に飛ばしていく。ツアー中のバスの窓からの風景や、ラジオの曲が聞こえないからと雪の橋をUターンする場面なども効果的に収められていて印象深い。

路線変更でジミーのマネージャーだったマーティー・マディソン(ダニー・グローヴァー)が降りてしまったり、3人がついにドリームスとして売り出したり、駆け足ながらまとめ方がうまく、私のように当時の背景やスターについて詳しく知らない人間にも十分楽しめる。スタイルもいつのまにか歌い出しているという正真正銘のミュージカルなのだが、違和感がほとんどない。曲と歌詞が物語にぴったりだし、リハーサル場面がいつのまにか本番に変わっているちょっとした演出(2度ほどある)もいい感じだ。

結局、パワーではなく、軽いサウンドで大衆に受けるようにしたい(白人に媚びるということもあったようだ)というカーティスによって(C.C.ホワイトも同調する)、もともとリードボーカルだったエフィーに代わって、容姿端麗なディーナを前面に売り出すことになる。声が大きすぎると注意されたエフィーは、恋人でもあったカーティスがディーナにも手を出していることに嫉妬。ふてくされて遅刻をしたら代役が立てられていて、自分の場所がないことを知る。

一方、ディーナの人気は鰻登りで、ヒット曲を連発する。エフィーは、自分には歌しか歌えないから職を探しても無駄と言ってそう間をおかないで登場するのだが、この時はもう7歳くらいの娘(後ではもうじき9歳と言っていた)がいて、おいおい、あ、これはミュージカルだったのだ、と。つまりそれだけよく出来ているということなのだが。

ジミーの凋落。ヘロインによる死。マーティーとC.C.ホワイトの協力でエフィーは新曲を歌うが、今度はカーティスが汚いやり方でそれをディーナの曲として売り込み、大ヒットとなる。ディーナには主演映画の話までやってくるが、カーティスとはそのことでもめ、君の声には深みがないとまで言われてしまう。

ディーナのモデルはダイアナ・ロスらしいが、それよりも(疎いからでもあるのだが)この皮肉はビヨンセ・ノウルズにはね返るものでもあるから、そのことの方が気になってしまう。ま、そんなことは百も承知で演じているわけなのだが、ジェニファー・ハドソンの歌いっぷりがすさまじく、歌唱力だけではスターになれないという彼女の立場(実際2004年にアメリカの人気オーディション番組で決勝まで残りながら優勝出来なかったらしい)が、物語を飛び越えてきそうな迫力となって面白い状況を作り出している(もっとも、私などこの映画を観ている時はともかく、単純に音楽だけを聴くとなると、ここまで歌いこまれてはちょっと、の口だ)。

ラストは、ドリームスの(ディーナが真相を知った末の)解散コンサートで、最後の曲はドリームスの3人にエフィーが加わっての舞台となる。その歌の最中にカーティスは、座席にエフィーの娘を見つけ近づいて行く。

これはカーティスが自分の子供ということに気づいたということを描写したつもりなのだろうが、ひどい手抜きだ(これだったらない方がすっきりする)。最後の最後でこれは惜しい。途中エフィのごね方が少しくどく感じたのと合わせて、数少ないミスではないか。

 

【メモ】

第64回米ゴールデン・グローブ賞作品賞(ミュージカル/コメディ部門)、最優秀助演男優賞、最優秀助演女優賞
第79回米アカデミー賞 助演女優賞受賞(ジェニファー・ハドソン)、録音賞受賞

原題:Dreamgirls

2006年 130分 シネスコサイズ アメリカ 日本語字幕:戸田奈津子

監督・脚本:ビル・コンドン 製作:ローレンス・マーク 製作総指揮:パトリシア・ウィッチャー 原作:トム・アイン 撮影:トビアス・シュリッスラー プロダクションデザイン:ジョン・マイヤー 衣装デザイン:シャレン・デイヴィス 編集:ヴァージニア・カッツ 振付:ファティマ・ロビンソン 作詞:トム・アイン 音楽:ヘンリー・クリーガー 音楽スーパーバイザー:ランディ・スペンドラヴ、マット・サリヴァン
 
出演:ジェイミー・フォックス(カーティス・テイラーJr.)、ビヨンセ・ノウルズ(ディーナ・ジョーンズ)、エディ・マーフィ(ジェームス・“サンダー”・アーリー)、ジェニファー・ハドソン(エフィー・ホワイト)、アニカ・ノニ・ローズ(ローレル・ロビンソン)、ダニー・グローヴァー(マーティー・マディソン)、キース・ロビンソン(C.C.ホワイト)、シャロン・リール(ミシェル・モリス)、ヒントン・バトル(ウェイン)、ジョン・リスゴー(ジェリー・ハリス)、ロバート・チッチーニ(ニッキー・カッサーロ)