グアンタナモ、僕達が見た真実

シャンテシネ2 ★★★

■パキスタンで結婚式のはずが、キューバで収容所暮らし

2001年9月28日、パキスタン系イギリス人のアシフ(アルファーン・ウスマーン)は、両親の勧める縁談のため、ティプトンから故郷パキスタンへ向かう。村で結婚を決めた彼は、ティプトンの友人ローヘル(ファルハド・ハールーン)を結婚式に招待する。ローヘルはシャフィク(リズワーン・アフマド)とムニール(ワカール・スィッディーキー)と共に休暇旅行と結婚式出席を兼ねてパキスタンにやってくる。

シャフィクの従兄弟ザヒド(シャーヒド・イクバル)も一緒になって結婚前の数日をカラチで送ることになる。ホテル代を浮かすためモスクに泊まり、ここで米国攻撃前のアフガニスタンの混乱を耳にする。好奇心と人を救うことにもなると5人はボランティア募集に応じ、トラブル続きの中、難民の波に逆らうようにカブールに着く。

空爆やアシフの体調が体調を崩したことで不安になった彼らは案内人にパキスタンに帰りたいと伝えるが、何故かタリバーンと合流していて、アメリカ軍の空爆や北部同盟の攻撃を受けてさまよううちに、ムニールとははぐれてしまう。

すでに言葉も通じない場所で、しかも夜の闇の中で砲弾が炸裂しトラックが炎上する。わけもわからず1晩中逃げまどうのだが、同じ場所に戻ってしまうような描写も出てくる。このあたりは観ている方も何がなんだかわからない状態だが、多分彼らも同じだったと思われる。トラック、コンテナと乗り継ぎ、気が付いたらアメリカ軍の捕虜になっていたというわけである。

コンテナの中は湿っぽくて息苦しく、座ると息がしやすかったのにいつのまにか気絶しているような状態。銃声がり、コンテナは穴だらけになり、死体の横で飲み水もないから布で壁の水を拭き飲んだという。この過酷な状態は収容所に行っても続く。あまりの狭さに交代で寝るしかなく、ロクに食料も与えられない。

英語を話す者は、と聞かれアシフは名乗りでるのだが(この直前に英国籍は隠せと誰かにアドバイスされるのだが、状況がよく確認出来なかった)、この判断は甘く、一方的にお前はアルカイダだと決めつけられ、アシフ、ローヘル、シャフィクは、キューバにあるグアンタナモ基地(デルタ収容所)へ移送されてしまう。

本人たちのインタビュー映像を混じえてのドキュメンタリーもどきの進行だが、袋を頭から被せられ足も結わえられての移動場面もあるから、つまりそういう状況に本人たちがいたわけだから、どこまで正確に再現されているのかはわからないが、ここに挿入されていたラムズフェルド国防長官のグアンタナモ収容所は人道的(+蔑視)発言がまったくの嘘っぱちだということは否定できなくなる。

常軌を逸した拷問や証拠の捏造については一々書かないが、冤罪事件でいつも不思議に思うのは自白を強制させて、それを上に報告すればそれでいいのかということだ。そこにあるのは真実の追求ではなく、担当者のいい加減な仕事ぶり(もしくは簡単に自分の評価を上げたいだけのつまらない欲望か)が存在するだけなのに。本気でテロを撲滅させたければ、こういうことだけはしてはいけないと上部だって思うはずで、であればそのための対策がもっとはかられていなければならないだろう。

過酷な拘束と偽英国大使員まであらわれる馬鹿げた取り調べは、英国警察の監督下に置かれていたということが判明して(警察がアリバイを証明したというわけだ)、終わりを告げることになる。

英国で起こしていた暴力と詐欺行為は彼らを救ったものの、そもそもアフガニスタンにはボランティアとはいえ物見遊山的な気持ちがあって出かけたのだし、そういう軽はずみな言動が2年半に渡る望まない旅をもたらしたことは否めない。しかし、とにかく彼らは耐えたのだ。理不尽な拷問や拘束に。これは賞賛されていい。そして救いもある。それは彼らの若さと、アシム本人がこれも経験で今は前向きに生きている、というようなことを最後に語っていたことである。

【メモ】

2006年ベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)受賞作品

グアンタナモにある収容所の特殊性については以下の吉岡攻のブログにも詳しい。
http://blog.goo.ne.jp/ysok923/m/200512 (ここの2005.12.16の記事)

原題:The Road to Guantanamo

2006年 96分 サイズ■ イギリス

監督:マイケル・ウィンターボトム、マット・ホワイトクロス 製作:アンドリュー・イートン、マイケル・ウィンターボトム、メリッサ・パーメンター 製作総指揮:リー・トーマス 撮影:マルセル・ザイスキンド 編集:マイケル・ウィンターボトム、マット・ホワイトクロス 音楽:ハリー・エスコット、モリー・ナイマン
 
出演:アルファーン・ウスマーン(アシフ・イクバル)、ファルハド・ハールーン(ローヘル・アフマド)、リズワーン・アフマド(シャフィク・レスル)、ワカール・スィッディーキー(ムニール・アリ)、シャーヒド・イクバル(ザヒド)、(以下3人は本人)アシフ・イクバル、ローヘル・アフマド、シャフィク・レスル