アンダーワールド エボリューション

TOHOシネマズ錦糸町-8 ★★★☆

■続篇の進化は予算以上

物語は前作のすぐあとを引き継いだ展開になっているから、この間観たばかりの私には非常に好都合。公開時期でいうと2年半ほど空いたことになるが、監督も同じだから作品の感触は変わらない。なにより前作同様の迫力の画面には圧倒される。

前作はセリーン(ケイト・ベッキンセール)の自分探し話だったが、ここでもそれは同じで、ヴァンパイア族とライカン族の誕生までが明らかにされるのだが、その鍵を握っているのも彼女だったのだ。

前提だけでも特殊なのに相変わらず凝った話で、咀嚼している余裕がないのが難点だ。この2作で3作分はゆうにある。詰め込みすぎなんだが、血を飲むことで記憶まで取り込んでしまうというアイデアもあって、画面上でのテンポは申し分ない。

もっとも元祖不死者のコルヴィナス卿(デレク・ジャコビ)の扱いなどは、唐突な感じがしなくもない。彼が重要な役回りを担ったことで、異端者の親子愛や兄弟愛という側面まで出てくるのだが、個人的には人間にはありえないような異端者としての価値観でもみせてもらいたいところだ。

アクションシーンで大活躍のマイケル(スコット・スピードマン)だが、それにしては存在感が薄い。それじゃああんまりだからってセリーンとの恋もあるのかもしれないが、この作品にベッドシーンはいらないよねー。監督はケイトと結婚したら見せびらかしたくなっちゃったとか? 変身した者同士のベッドシーンを用意するくらいのこだわりがあればまた別なんだけどね。

ヴァンパイア族の始祖マーカス(トニー・カラン)は前作の敵ビクター以上の肉体を持つ。さらにマーカスの兄弟で、凶暴さ故に牢獄に監禁されていた最初のライカンであるウィリアムまでが甦る。セリーンもマイケルもさらなる混血を経て、力を得る(ここらへん適当に納得するしかないのな)ので、戦いは壮絶なものになる。

銃弾を浴びても致命傷にならない馬鹿馬鹿しさが、逆に意外なほど面白いアクションシーンになっている。残酷なシーンが次から次ぎに出てくるのだが、ヘンな暗さがないのは救いだ。

墜落したヘリコプターがらみのアクション(これはアイデアもいい)など、予算面でもスケールアップもされているみたいなのに、とっておき?のウィリアムスまで殺してしまったら次回作はどうなるんだ!って、今度は予告していないから、お終い? だったら、ちょっと残念だ。

原題:Underworld Evolution

2006年 106分 アメリカ ●サイズ 配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント R-15 日本語字幕:●

監督:レン・ワイズマン 製作:ゲイリー・ルチェッシ、トム・ローゼンバーグ、リチャード・ライト 製作総指揮:デヴィッド・コートスワース、ダニー・マクブライド、ジェームズ・マクウェイド、スキップ・ウィリアムソン 原案:レン・ワイズマン、ダニー・マクブライド 脚本:ダニー・マクブライド 撮影:サイモン・ダガン プロダクションデザイン:パトリック・タトポロス 衣装デザイン:ウェンディ・パートリッジ 編集:ニコラス・デ・トス 音楽:マルコ・ベルトラミ

出演:ケイト・ベッキンセイル(セリーン)、スコット・スピードマン(マイケル)、トニー・カラン(マーカス)、ビル・ナイ(ビクター)、シェーン・ブローリー(クレイヴン)、デレク・ジャコビ、スティーヴン・マッキントッシュ、マイケル・シーン、ソフィア・マイルズ(エリカ)、ジータ・ゴロッグ、リック・セトロン

美しき運命の傷痕

銀座テアトルシネマ ★★★★

■愛に見放された三姉妹とその母

長女のソフィ(エマニュエル・ベアール)は夫(ジャック・ガンブラン)の浮気に見境のない行動にでてしまうが、離婚を決意する。恋をすることもなく療養所に通って母(キャロル・ブーケ)の世話をしている次女のセリーヌ(カリン・ヴィアール)だが、謎の男につきまとわれる。三女のアンヌ(マリー・ジラン)は不倫相手の大学教授(ジャック・ペラン)に別れを告げられ激しく動揺するが、相手は死んでしまう。

愛に見放されたこの三姉妹の苦悩を、映画は幼い時に父親を失ったトラウマに結びつける。ソフィの行動は夫=父親を失うことへの恐れ、セリーヌは事件の目撃者であるが故の男性不信、アンヌは父親への思慕だろうか。

謎の男の告白で、父親が自殺に至った事件の真相が判明する。疎遠になっていた三姉妹が集まり、母親に誤解だったことを告げるのだが、彼女は「自分は後悔していない」と言う。

ここでやっと巻頭のタイトルバックが、カッコウの託卵の様子を克明に写した映像だった理由がわかる。つまり三姉妹は母の不倫の子だったのだ。

そういえば、先に孵化したカッコウは、残りの卵を巣の外に落とすのだが、自分も転落してしまう。そこにちょうど刑務所から出てきた父親が通りかかり、転落した雛を巣に戻すのが映画のはじまりだった。彼は託卵が成就する手助けをする運命にあったということになる。この場合、自殺こそが手助けだったとしたらずいぶんな話だ。

少なくとも三姉妹にとっては霧が晴れ、再生の道が開けたと思うのだが、母親の後悔していないという一言をどう受け止めるかという問題は残る。観客には不倫の子だということはわかっても、彼女たちは知らないのだし。そう考えていくと、だんだん怖くなってくる。

クシシュトフ・キエシロフスキの遺稿をダニス・タノヴィッチ監督が映画化したというこの作品は、映像も意味深で仕掛けが多い。思わせぶりな展開もどうかと思う。そのぶん間の悪い車掌などを登場させてバランスをとってはいるが、話の基調がこんなだからとても好きにはなれない。

それはたとえば、アンヌが、教授の娘(親友なのだ)に恋の相手を悟らせようとするのだが、そして彼女の父親を独占したいという気持ちがそうさせたのだと理解できても、彼女の行為を弁護する気になれないのと同じだ。

アンヌが受ける口頭試問のテーマが、たまたま夫の愛した子を殺す「王女メディア」だったのにはドキリとするが、教授は試験場に姿を現さずアンヌの妊娠も確定ではないようだから、これはソフィを連想させようとしているのか。いずれにしても、少しばかりうっとうしい。

でも、それはそうなんだが、十分面白い映画であることは間違いない。しっかり筋を頭にたたき込んだら、もう一度今度はあら探しをするつもりで観てみたい作品だ。

原題:L’ Enffr

2005年 102分 サイズ■ フランス、イタリア、ベルギー、日本 日本語字幕:■

監督:ダニス・タノヴィッチ 製作:マルク・バシェ、マリオン・ヘンセル、セドミール・コラール、定井勇二、ロザンナ・セレーニ 原案:クシシュトフ・キエシロフスキー、クシシュトフ・ピエシェヴィッチ 脚本:クシシュトフ・ピエシェヴィッチ 脚色:ダニス・タノヴィッチ 撮影:ローラン・ダイヤン プロダクションデザイン:アリーヌ・ボネット 編集:フランチェスカ・カルヴェリ 音楽:ダスコ・セグヴィッチ
 
出演:エマニュエル・ベアール(ソフィ)、カリン・ヴィアール(セリーヌ)、マリー・ジラン(アンヌ)、キャロル・ブーケ(母)、ジャック・ペラン(フレデリック)、ジャック・ガンブラン(ピエール)、ジャン・ロシュフォール(ルイ)、ミキ・マノイロヴィッチ(父)、ギョーム・カネ(セバスチャン)、マリアム・ダボ(ジュリー)、ガエル・ボナ(ジョセフィーヌ)、ドミニク・レイモン(ミシェル)

アンダーワールド

TOHOシネマズ錦糸町-7 ★★★

■スタイリッシュバンパイア誕生

ヴァンパイアとライカン(狼男)が数百年に渡る死闘を繰り広げてきたというヘンテコリンかつどうでもいいような設定で、はじまったとたんの説明で不安になる。

ライカンの首領ルシアンを倒してからヴァンパイア族の勝利は目前に迫っていたが、女戦士のセリーン(ケイト・ベッキンセイル)はライカン族を追っていて、彼らがマイケル(スコット・スピードマン)という医師(彼は普通の人間)を狙っていることに疑問を抱く。

設定が奇抜だし人間との接点はマイケルだけなんだが、話(込み入っているので省略)は予想以上にしっかりしたものだった。ヴァンパイアものは、SFというよりファンタジーになってしまうのだが、その懸念もいつのまにか忘れていた。

映像に力があることが大きい。主体は銃撃戦だから、凡庸なもので終わってもおかしくないのに、それを含めてけっこう緊張させられるシーンが多いからだろう。

細部にも凝っていて、銃撃戦とはいっても対ヴァンパイアには紫外線弾(吸血鬼は日光に弱いからね)で、狼男には硝酸銀(が体内で溶け出して復活できなくなる)弾なんだって。うはは。

でもそれにしては、種族間の戦争というよりはやくざの抗争程度にしか見えない(人間社会に隠れて存在する同士だから仕方ないのだけど)のと、狼男のように激しく変身するのならともかく、ヴァンパイアの方は、眠りを妨げられた指導者ビクター(ビル・ナイ)にしてもヴァンパイアらしからぬというか、映画の中では特別な意味付けがされていないというのはマイナスだ。

まあそれは、ラストですでに次回作を激しく予告しているので、それを待てということか。

私の中では評価の低かったケイト・ベッキンセイルだが、このセリーン役はぴったりだ。

原題:Underworld

2003年 121分 アメリカ ●サイズ 配給:ギャガ=ヒューマックス PG-12 日本語字幕:●

監督:レン・ワイズマン 製作:ゲイリー・ルチェッシ、トム・ローゼンバーグ、リチャード・S・ライト 製作総指揮:ロバート・ベルナッキ、ジェームズ・マクウェイド、スキップ・ウィリアムソン、テリー・A・マッケイ、ヘンリー・ウィンタースターン 原案:レン・ワイズマン、ケヴィン・グレイヴォー、ダニー・マクブライド 脚本:ダニー・マクブライド 撮影:トニー・ピアース=ロバーツ 美術:ブルトン・ジョーンズ 編集:マーティン・ハンター 音楽:ポール・ハスリンジャー 衣裳デザイン:ウェンディ・パートリッジ

出演:ケイト・ベッキンセイル(セリーン)、スコット・スピードマン(マイケル・コーヴィン)、シェーン・ブローリー(クレイヴン)、マイケル・シーン(ルシアン)、ビル・ナイ(ビクター)、アーウィン・レダー(シング)、ソフィア・マイルズ(エリカ)、ロビー・ギー(カーン)、ウェントワース・ミラー(Dr.アダム)、ケヴィン・グレイヴォー(レイズ)、リック・セトロン