百万長者の初恋

テアトルタイムズスクエア ★

■ヒョンビンとヨンヒを見るだけのめちゃくちゃ映画

18歳になって、祖父の作り上げた財団という莫大な遺産が転がり込むはず(住民登録証というのが必要らしい)でいたカン・ジェギョン(ヒョンビン)だが、相続には田舎にあるポラム高校を卒業しなければならないという条件(祖父の遺言)がついていた。18歳の男にこれから高校を卒業しろとは、ジェギョンというのは昔から相当の放蕩息子だったのか、祖父に先見の明があるのか、それとも脚本がいい加減なだけなのか(余計なことだが韓国の学制は6・3・3・4制である)。

しかたなく生徒になったジェギョンだが、退学処分になれば遺産が相続できるのではないかと考え、登校早々同級生のミョンシク(イ・ハンソル)に喧嘩を売って彼に殴りかかる。が、彼の父親からは男は喧嘩をして育つものだと言われ、家で夕食をご馳走になってしまう。ウォンチョル校長(チョン・ウク)には支援金を寄付するから退学させてくれとかけ合うが、信念の人である校長が動じるはずもなく、遠回りでも正しい道をと諭される。

ポラム高校と指定されていた理由を考えないジェギョンがそもそも間抜けで、だいたい卒業が条件というのに強制退学では通りっこないのだが、というより映画がすべてにアバウトなのだ。それは遺産に難病のヒロインと、臆面のない設定をしていることでもわかる。

ジェギョンのキャラクターも最初こそ金持ちを鼻にかけた嫌味なものだが、田舎に呼び寄せた悪友たちが、自分がぶつかってばかりいたイ・ウナン(イ・ヨンヒ)を悪く言うと、もうその時点ではウナンの味方になっているのである。

クラス委員でもあるウナンは、自分が育った恩恵園という施設の子供たちのためにアルバイトでミュージカルの費用を稼いでると。健気なのだ。そんで、というかなのに、彼女は肥大性心臓疾患という不治の病にかかっていた、ってねー。

深刻なのにふざけたくなるのは、映画がそうだからで、この心臓病の危険さを語った医者に、愛が恐ろしい(動悸で心臓に負担がかかるから)と言わせて、ジェギョンもウナンにきつい言葉を浴びせて別れようとするのだが、失恋は感情がたかぶらないとでもいうのだろうか。

病気のウナンはこのあとも普通に働いていたし、どころか心臓が故障したみたいと言ったかと思えばミュージカルで激しい踊りを披露したり(『サウンド・オブ・ミュージック』なのだが、映画とはイメージの違う別物)と、このいい加減さは筋金入りなのである。

なにしろ病室にいつまでも2人っきりでいたり、途中からは同棲生活のようなことまではじめてしまうし……ようするに2人の甘ったるい会話が成立さえすれば、あとは何でもありという映画なんだろう。

だから、実はジェギョンとウナンは幼なじみで、それで巻頭にあった場面の謎が解けるのだが、しかしそれが明かされたころには、もう物語などどうでもよくなってしまっているのである。

なのに飽きずに映画を観ていられたのは、ウナン役のイ・ヨンヒが可愛らしかったからだ。写真だと特に好みというわけではないのだが、画面で動いている彼女の表情や仕草にはデレッとしてしまう。なにより今の日本の女の子のような人工的な感じがしないのがいい。映画館はヒョンビン目当ての女性が多そうだった(女性率95%)が、配給会社はこのイ・ヨンヒをもっと売り込むべきではなかったか。

しかし、それにしても何故「日本版エンディング曲」をつけたがるのか。しらけるだけなのに。

 

【メモ】

http://blog.naver.com/hyunbin2005 ←映画未公開映像「ドレミの歌」。こちらは元の映画と似た作りになっている。

原題:・ア・護棗・川攪 ・ォ・ャ・曾r
英題:A Millionaires First Love

2006年 113分 ビスタサイズ 韓国 日本語字幕:根本理恵

監督:キム・テギュン 脚本:キム・ウンスク 音楽:イ・フンソク
 
出演:ヒョンビン(カン・ジェギョン)、イ・ヨンヒ(イ・ウナン)、イ・ハンソル(ミョンシク)、チョン・ウク(ウォンチョル校長)、キム・ビョンセ(ユ弁護士)

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