インビジブル2

シネパトス2 ★★

■透明だから見せ場も作れない、てか

ライズナー研究所の開いたパーティで起きた不思議な殺人事件を担当していたフランク・ターナー刑事(ピーター・ファシネリ)とリサ・マルチネス刑事(サラ・ディーキンス)だが、国防総省の介入で捜査をはずされ、代わりに女性科学者マギー・ダルトン博士(ローラ・レーガン)の警護を命じられる。

マギーは犯人の次の標的らしいのだが、フランクたちには肝腎なことは何も知らされない。半年前に研究所を解雇されている当のマギーも、守秘義務を盾に口を開こうとしない。張り込み中に、姿の見えぬ犯人はリサを殺害。そこへ何故か突入してきた特殊部隊。犯人はマギーに襲いかかるが、混乱の中、なんとかフランクに助けられ車に乗り込む。

あらすじだと緊迫感がありそうだが、映画は平凡な仕上がり。姿の見えぬ犯人=透明人間の怖さがほとんど出ていないのだ。目に見えないのだから、描きようがないのかもしれないが、だったら映画なんか作るな、と言いたくなる。ビデオカメラにうっすらと影が映ることで恐怖を予感させたり、透明人間を映像として捕捉するカメラ(ナイトビジョン搭載ビデオ)も出てくるが、どれもあまり機能していない。透明人間対透明人間の雨の中の決闘という、考え抜いただろう今回最大の見せ場も、不発。さらに言えば、雑踏で透明人間がフランクたちを追いかけるのはまったく無理がある(考えればわかることなのに!)。

やっとのことで犯人を振りきって逃げ込んだ警察でも、マギーを軍に引き渡すように言われるし、特殊部隊の突入にも不信感を抱いていたフランクは、またマギーと共にそこから逃げ出す。そして、マギーの口からもついに真相が……。

5年前の惨事(2000年公開の第1作)によって中断していた研究は、「見えない戦士」に期待を寄せる国防総省の援助のもと、ライズナー博士(デヴィッド・マキルレース)によって引き継がれていた。しかし透明化には、次第に細胞が損傷しついには死に至るという副作用があった。その緩和剤を完成させたのがマギー。だが、被験者となった特殊部隊員のマイケル・グリフィン(クリスチャン・スレイター)には、何故か緩和剤は投与されなかったらしい。そしてマギーには、解雇は緩和剤で死亡したためと説明されていたのだった。

国防総省が自ら出動して警察の動きを封じながら、しかしそれにしては悪玉の陰謀はスケールの小さいものだし、ひねりもない(ひねりすぎが流行った反動?)ものだ。とはいえ、兵器としてではなく、政敵の抹殺が目的というのは案外単純で正しい使い方かもしれない。ただし、このあたりの説明もあっさりしたものだ。

この政敵暗殺計画を語ったのは、第2号被験者というティモシー・ローレンス。彼はすでに瀕死の状態にあり、しかも可視化のだいぶ進んでいるおぞましい姿で登場する。この他にもマギーの妹ヘザー(ジェシカ・ハーモン)に魔の手を伸ばさせたり、なんとか平坦さを避けようとしているが、全体に人間関係に無頓着で深みがないから、用意した状況が生きてこない。フランクといい関係に見えたリサは、簡単にマギーの身代わりになって早々に退場させてしまうし、そのあと、フランクがマギーと近しい雰囲気になっていくあたりもまったくの書き込み不足。

一番怖くて面白い場面は、フランクが追いつめられて透明人間の薬を自分に打つところか。で、このあとグリフィンと対決し彼を殺戮するのだが、これがシャベルで刺し殺すという残忍なもの。今回は製作総指揮ながらポール・ヴァーホーヴェンらしさもうかがえる。

それにしても、グリフィンはどこまでが暴走だったのだろうか。透明人間より制御不能人間部分に重みをおいた方が、数段面白い作品になったはずだ。続編を暗示して終わった(次作はフランクの暴走か!)が、もう観ないかも。

クリスチャン・スレイター(最近活躍してないよね)は、ほとんど顔を見せることがなかったが、透明人間場面のギャラはもらえるのだろうか。

原題:Hollow Man 2

2006年 91分 サイズ■ アメリカ 日本語字幕:加藤リツ子

監督:クラウディオ・ファエ 製作:デヴィッド・ランカスター、ヴィッキー・ソーサラン 製作総指揮:ルーシー・フィッシャー、ポール・ヴァーホーヴェン、ダグラス・ウィック、レイチェル・シェーン キャラクター創造:ゲイリー・スコット・トンプソン、アンドリュー・W・マーロウ 原案:ゲイリー・スコット・トンプソン 脚本:ジョエル・ソワソン 撮影:ピーター・ウンストーフ 視覚効果スーパーバイザー:ベン・グロスマン プロダクションデザイン:ブレンタン・ハロン 編集:ネイサン・イースターリング 音楽:マーカス・トランプ
 
出演:ピーター・ファシネリ(フランク・ターナー刑事)、ローラ・レーガン(マギー・ダルトン博士)、クリスチャン・スレイター(マイケル・グリフィン)、デヴィッド・マキルレース(ライズナー博士)、ウィリアム・マクドナルド(ビショップ大佐)、サラ・ディーキンス(リサ・マルチネス刑事)、ジェシカ・ハーモン(ヘザー・ダルトン)、ソーニャ・サロマ

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