幸せのセラピー

新宿武蔵野館2 ★★

■メタボマスオをセラピーすると

『幸せのセラピー』という邦題に、甘い恋愛映画を思い浮かべていたからだけど、あからさまな内容には驚いてしまった(なのにチケット売り場では『幸せのレシピ』と言ってしまった私。それはもう観たじゃないのねぇ)。

銀行頭取の娘ジェスと結婚したビルは、一族で固められた銀行の主要ポストにはいるものの、すべてのことは義父や義弟に従う習慣にどっぷり漬かっていて、嫌いな鴨狩りにも行きたくないとは言えず、行けば行ったで犬の代わりに獲物を拾いに行くのが関の山。ストレスでチョコバーが手放せず、鏡を見ればそこには冴えない顔があるだけだ。メタボだし、老いを感じずにはいられない。

追い打ちをかけるように発覚したジェスの浮気だが、ビルはジェスが浮気するのも無理からぬと自分でも思ったのか(ある意味偉い?)、浮気現場を撮影したビデオを証拠にジェスに詰め寄るが、何故か怒りの対象は浮気相手のテレビレポーターに向かう(は?)。

まず、これがわからない。ジェスを怒れないのは長年のマスオさん生活よるものにしても、ジェスに「捨てられたらどうしよう」はないだろう。まあ、そういう自分を、メンター制度(OBのところで社会体験をする制度)で知り合ったマセガキ学生と、彼の年上の恋人未満のルーシーの協力で変えていくという話なので、どうしてもビルが情けない人物像になってしまうのは致し方ないのだが、そうではなく、ビルの思考回路が私にはよく理解出来ないのだった。

もしかしたらそれは、彼が負けず嫌いだからなのだろうか。銀行の業務に逆らうようにドーナツ屋のフランチャイズオーナーになろうと努力を重ねていたのも、分散投資の見本を示したかっただけなのか(ちょいスケールがねぇ)、最後の方ではジェスも反省して、このフランチャイズに乗り気になってくれたというのに、ビルはやりたいことではなかったと言ってしまう。単に脱メタボ指向になったのでそう言っただけのようにも見えるが、彼にとっては一人でやり遂げることに意味があったのかもしれない。

執拗に挟まれるプールでのトレーニング映像が、彼の負けず嫌いを語っているのだが、この彼の性格は、彼のことをねじ曲げているように思えてならないのだ。だからって、ビルの選んだ新しい人生を、別に邪魔しようというのではないのだけれど。この際、リセットすべきなのかもしれない。出来る人は大いにやった方がいいと思う。

ただしマセガキ学生との友情関係については、私のようなじじいにとっては、彼がとんでもないヤツにしか見えない。金もふんだんに使える恵まれたお坊ちゃんで、って、もういいか、どうでも。

宣伝ポスターからだと、ジェシカ・アルバはまるでアーロン・エッカートの相手役のような印象を受けるが、マセガキ学生にナンパされるただのランジェリーショップ店員にすぎない。マセガキ学生を諭すようなことも言っていたが、ジェスの嫉妬心を煽る役を買って出たり、なんだか面白くもない役所だった。

そういえば脱メタボに取り組み始めたビルが、カッコよく見せるためなのだろう、体毛を剃る場面があった。胸毛に、あとの方では腕や足の毛まで。アジア圏ならそんな気もするが、アメリカやヨーロッパでは男の体毛はセックスシンボル的役割を果たしていると思っていたが、昨今ではそうでもないのかしら。けどこの場面まで、こう丁寧に見せられちゃってはねぇ。

まとまりのないヘタクソな話なのだが、至る所に本音やら本性は出ていたか。まあ、薦めないけど。

原題: Meet Bill

2007年 97分 アメリカ ビスタサイズ 配給:アートポート 日本語字幕:高内朝子 PG-12

監督メリッサ・ウォーラック、バーニー・ゴールドマン 製作:ジョン・ペノッティ、フィッシャー・スティーヴンス、マシュー・ローランド 製作総指揮:ティム・ウィリアムズ、アーロン・エッカート 脚本:メリッサ・ウォーラック 撮影:ピーター・ライオンズ・コリスター  プロダクションデザイン:ブルース・カーティス 衣装デザイン:マリ=アン・セオ 編集:グレッグ・ヘイデン、ニック・ムーア 音楽:エド・シェアマー 音楽監修:デイヴ・ジョーダン、ジョジョ・ヴィラヌエヴァ

出演:アーロン・エッカート(ビル)、ローガン・ラーマン(生徒)、エリザベス・バンクス(ジェス/ビルの妻)、ジェシカ・アルバ(ルーシー/ランジェリーショップ店員)、ティモシー・オリファント(チップ・ジョンソン/テレビレポーター、ジェスの浮気相手)、ホームズ・オズボーン(ジョン・ジャコビー/ジェスの父、銀行頭取)、リード・ダイアモンド、トッド・ルイーソ、クリステン・ウィグ、ジェイソン・サダイキス

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