今度の日曜日に

新宿武蔵野館2 ★★★

大麻所持で逮捕されちゃったのでポスターからも消されちゃった中村俊太

■興味を持つと見えてくる

ソウルからの留学生ソラと、中年の、まあ冴えない男との交流を描くほのぼの系映画。

ソラが実習授業で与えられた課題「興味の行方」の興味は、ヒョンジュン先輩をおいて他にないはずだったが、事情はともあれ、彼とは悲しい失恋のようなことになって、変な人物に行き当たる。それが学校の用務員の松元で、他にピザ配達と新聞配達をしているのは、彼が借金まみれだからなのだった。

交差しそうもない二人が自然と繋がりができていく過程はうまく説明されているし(でも松元のドジ加減や卑屈さは強調しすぎ。もっと普通でいい)、この組み合わせだと危ない話になってしまいそうなのだが、ユンナと市川染五郎のキャラクターがそれを救っていた。あと、松元の小学生になる息子が訪ねて来るんでね。本当に(ソラが)ただの学生だとお母さんに誓って言える、と指切りまでしちゃったら、悪いことは出来ないよな。

ソラが何故日本で映像の勉強をしているかというと(注)、母親の再婚話への反発がちょっぴりと、でも一番は、ビデオレターの交換相手で、想いを寄せる先輩と同じことをしたかったからなのだが、はるばる日本へやってくると、先輩は実家の火事で父親が亡くなり、行き違いで韓国へ戻ってしまっていたのだった。

ヒョンジュンを巡る話は、彼がソラに会うのがつらくて逃げていたという事情はあるにせよ、行き違いの部分も含めて少々無理がある。だから、最初は削ってしまった方がすっきりすると思ったのだが、でもソラの心の微妙なゆれは、留学を決めたときから最後のヒョンジュンの事故死(彼の役回りは気の毒すぎて悲しい)を聞くところまでずっと続いているわけで、そう簡単には外せない。

ヒョンジュンが死んだことを聞いて、ソラは、松元が集め心のよりどころにしていたガラス瓶を積んでいる自転車を倒してしまう。落ち込むソラを松元がアパートのドアの外から執拗に語りかける場面は、ここだけ見ると、おせっかいで迷惑にも思えるが、もうこの時にはお互いに踏み込んでいい領域はわかっていたのだろう。

それに二人で松元の子供を駅に見送るあたりから、松元はソラさんは強いから大丈夫などと言っていたから、ソラがどこかに寂しさを抱えていることを見抜いていたのだろう。ソラが松元に自分の気持ちを打ち明けているような場面はなかったはずだが。興味の行方を自分のような中年男にしたことで、松元は何かを感じていたのだろうか。

やっとドアを開けたソラから瓶を割ってしまったことを聞いた松元は、ソラがなんとか修復しようとしていた瓶を「人が悲しむくらいならない方がいい」と言って全部外に持ち出して割ってしまう。「瓶なんか割れたっていいんだ。大切なのはソラさんなんだ」とも言って。

ただ、ここと、クリスマス会(瓶で音楽の演奏する練習もしていたのに)にも来ないで、ありがとうという紙切れを残していなくなってしまう松元、という結末は説明不足だし唐突だ。ソラの「興味の行方」の映像も、これでは未完成のままだろうに。

映画のテーマは何だろうか。普段見過ごしているようなこと(人)も興味を持つと見えてくる、そんなところか。あまりにも普通すぎることだけど、多分みんな見過ごしているとが沢山あるはずだと思うから……。

そういえば「興味の行方」の課題が出た授業で、せっかく韓国から来たのだからと言う級友に、ソラは「あたし、韓国代表じゃありません」と言っていた。そして映画もことさらそういうことにはこだわらず、だから別段留学生でなくてもいい話なのだが、でも隣国の韓国ともこんなふうにごく自然に付き合っていけるようになってきたのなら、それはとてもいいことだ(と書いてるくらいだからまだまだなんだろうけど)。

注:留学先は信州の信濃大学という設定である。ロケは信州大学でやったようだ(http://www.shinshu-u.ac.jp/topics/2008/03/post-138.html)。

2009年 105分 ビスタサイズ 配給:ディーライツ

監督・脚本:けんもち聡 プロデューサー:小澤俊晴、恒吉竹成、植村真紀、齋藤寛朗 撮影:猪本雅三 美術:野口隆二 音楽:渡辺善太郎 主題歌:ユンナ『虹の向こう側』 企画協力:武藤起一 照明:赤津淳一 録音:浦田和治

出演:ユンナ(チェ・ソラ/留学生)、市川染五郎(松元茂/用務員)、ヤン・ジヌ(イ・ヒョンジュン/ソラの先輩)、チョン・ミソン(ハ・スジョン/ソラの母)、大和田美帆(伊坂美奈子/ソラの同級生)、中村俊太(大村敦史/ヒョンジュンのバイト仲間)、峯村リエ、樋口浩二、谷川昭一朗、上田耕一、竹中直人(神藤光司/教授)

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