時をかける少女

テアトル新宿 ★★★☆

■リセットで大切なものがなくなって

3度目の映画化らしいが、この作品は原作を踏まえたオリジナルストーリーで『時をかける少女2』という位置づけのようだ。というのもそもそものヒロイン芳山和子が、この映画のヒロインである紺野真琴の叔母という設定だからだ。

真琴は東京の下町に住むごくごく普通の高校2年生。クラスメートの間宮千昭と津田功介とめちゃ仲がよくて、3人で野球の真似事をする毎日。って普通じゃないような。男友達が1番の親友なのは真琴のさっぱりした性格と、友達から恋に発展する過程に絶好の設定と思ったのだろうが、今時の高校生という感じが私にはしないんだけど。

ま、それはともかく、真琴は夏休み前の踏切事故で自分にタイムリープの能力があることを知る(能力を手に入れたのは学校の理科室なのだが、まだこの時にはそのことはわかっていない)。そしてその力を真琴はおもちゃで遊ぶように使ってしまう。自分の都合の悪いことが起きると、その少し前に戻ってリセットしてしまうわけだ。

真琴の安易な発想が『サマータイムマシン・ブルース』(05)的なのには笑ってしまうが、この小さなタイムリープの繰り返しは、私たちが何気なく過ごしてしまう日常に、多くの反省点が潜んでいるということを教えてくれる。反省点と言うと大げさだが、見落としていることが多いのは確かで、真面目くさってやり直しを続ける真琴に馬鹿笑いしながらも、そんなことを感じていたのだ。

であるからして、見落としたことが沢山あるにしても、くれぐれもプリンを取り戻すようなことには使わないように。そう、真琴も「いい目をみている自分」がいることで「悪い目をみている人」が出来てしまうことに気が付くのだ。

そんなタイムリープ乱用中の真琴に、千昭から告白されるという思わぬ展開がやってくる。狼狽のあまりタイムリープで告白自体をなかったことにしてしまうのだが、そこ(新たに現れた過去)では今度、千昭に同級生の早川友梨が告白し、千昭もまんざらではない様子なのだ。好きだと言われたばかりの真琴は複雑な気分だ。ボランティア部の下級生藤谷果穂からは功介に対する相談まで受けて……。

リセットで大切なものをなくしてしまったことに思い至る真琴だが、実はタイムリープも限界に近づいていて(体にチャージして使用する)、どうやら腕に出てくるサインが本当なら、あと1度しか使えないらしいのだ。

このあと千昭が未来人で、和子叔母さんが修復している絵を見にここ(現在)にやってきたことなど、いろいろな謎が解き明かされていく。千昭にも残されたタイムリープはあと1度で、でもそれは自分の帰還にではなく、功介と果穂を助けるために使われることになる。そして真琴に残された1度のタイムリープは……。

千昭との別れは必然であるようだが、でも自分勝手な私はそう潔くはなれない。「未来で待ってる」「うん、すぐに行く。走って行く」でいいのかよ、って。いいラストなんだけどね。

で、やっぱり気になってしまうのは、「魔女おばさん」(真琴がそう呼んでいる)の和子だろう。博物館で絵画の修復の仕事をしている30代後半の未婚の女性という設定だと、まだ何かを待っているということになるが(ということは真琴も?)。

それにしては、真琴から相談を受けても落ち着いたものだ。タイムリープを「年頃の女の子にはよくあること」にしてしまうし、「よかった。たいしたことには使っていないみたいだから」と野放しにしていても平然としている。真琴を信頼しているにしても、この達観はどこから来ているのだろう。落ち着いてる場合じゃないよ。だって自分のことにも使えるかもしれないし、とにかくもっといろいろ聞き出したくなるが、ほじくり出してしまっては収拾がつかなくなってしまって、やはりまずいのかも。ここは単なる原作や前作へのリスペクトとわきまえておくべきなのだろう。

タイムマシンものはどうしても謎がつきまとって、これをやりだすとキリがないが、この映画で描かれるタイムリープは、過去に戻っても自分と遭遇することはない。つまりそこにいるのは未来の記憶を持った(その分だけ余計に生きた)自分のようだ。うーむ。これは考え出すと困ったことになるのだが、ということは真琴も千昭も互いにタイムリープしていると、どんどん違う世界を作り出していって、結局は自分の概念の中にしか住めない狭量な世界観の持ち主ってことになってしまうんでは。ま、いっか。

   

【メモ】

学校の黒板にあった文字。Time waits from no one.

津田功介は幼なじみで、医学部志望の秀才。千昭は春からの転校生。

「真琴、俺と付き合えば。俺、そんなに顔も悪くないだろ」(千昭)。

「世界が終わろうとした時に、どうしてこんな絵が描けたのかしらね」(修復した絵を前にして和子が言う)。

絵は千昭によると、この時代だけにあるという。絵が失われてしまうような希望のない未来。

「お前、タイムリープしていない?」千昭は、真琴のタイムリープに気付く。何故? これは不可能なのでは。千昭の説明だとタイムリープの存在を明かしてはいけないことになっているが?

腕に表れるサイン。90。50。01。

「人が大事なことをはなしているのに、なかったことにしちゃったの」と千昭の告白をリセットしてしまったことを後悔する真琴。

「(絵が)千昭の時代に残っているように、なんとかしてみる」(真琴)。

2006年 100分 配給:角川ヘラルド映画 製作会社:角川書店、マッドハウス

監督:細田守 脚本:奥寺佐渡子 原作:筒井康隆『時をかける少女』 美術監督:山本二三 音楽:吉田潔 キャラクターデザイン:貞本義行 制作:マッドハウス

声の出演:仲里依紗(紺野真琴)、 石田卓也(間宮千昭)、板倉光隆(津田功介)、 原沙知絵(芳山和子)、谷村美月(藤谷果穂)、 垣内彩未(早川友梨)、 関戸優希(紺野美雪)

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