ティンカー・ベル 日本語吹替版

TOHOシネマズ錦糸町シアター8 ★★★☆

■わがまま娘が物作りという才能を開花させるとき

妖精ティンカー・ベルとして誕生した彼女に教えることで、同時に観客にもネバーランドにあるピクシー・ホロウという妖精の谷が紹介されていく。細部まで神経の行き届いた色鮮やかな景色や物に妖精たち……。いかにもディズニーといった世界なのだが、ファンタジーにはなじめない私も、このアニメの出来にはうっとりさせられた。

妖精たちの仲間入りを果たし、才能審査の末、物作り担当となったティンカー・ベルだが、物作りはメインランド(人間界)に行けないと知ると、自分の仕事がつまらなく思えてしまい、メインランドへの憧ればかりが膨らんでいく。

こんな場所で暮らせるだけでも素敵なのに、それにメインランドが何たるかも知らないっていうのに、と思わなくもないが、これは子供のあれが欲しいこれも欲しい的発想に近いかもしれない。

だから屁理屈は並べず、ティンカー・ベルのわがままが思わぬ騒動を起こして、春(を作り出すの)が間に合いそうになくなる、という流れは、大人にはもの足りなくても、子供たちには受け入れやすいのではないか。

実際、私の観た映画館は日本語吹替版ということもあって、かなりの人数を子供(5歳くらいの子も多かった)が占めていたのだが、驚くほど静かな鑑賞態度だった(上映時間が短いっていうのもある)。

そうやって不平不満分子のティンカー・ベルが色々なことに気づいていく教訓話であり、自分という個性の発見物語(無い物ねだりはやめようという話でもある)には違いないのだが、ティンカー・ベルに物作りという役割をふったことで(Tinker Bellは鋳掛け屋ベルとでも訳せばいいのだろうか。だから物作りなのね)、結果として子供向けの映画でありながら、物作りが基本の実体経済を顧みずに、マネーゲームに走って金融危機を招いたアメリカ合衆国の姿を反映することになったのは面白い。

もっともティンカー・ベルのやったことは、大量生産的手法で生産効率を上げることでしかないし(人類はそのことで生じた負の部分をどうするかについてはまだ明確な答えが出せずにいるものなぁ)、手間暇かける手作りのよさをないがしろにしているようにもみえてしまうから心配になる。それに、妖精のくせしてメインランドからの漂着物利用で難を逃れるというのも、解せない話ではある。

まあ、大量生産で間に合わせたからといって、予定通り春が用意出来れば次の夏をすぐさま作り始める必要などまるでないわけで、そもそもネバーランドでの生産活動は地球温暖化に繋がるものではないし、時間が余ったからといってその分余計に働かされるという心配もなさそうなんだけどね。

  

原題:Tinker Bell

2008年 79分 ■サイズ アメリカ 配給:ディズニー

監督:ブラッドリー・レイモンド 製作:ジャニーン・ルーセル キャラクター創造:J・M・バリー 原案:ジェフリー・M・ハワード、ブラッドリー・レイモンド 脚本:ジェフリー・M・ハワード 音楽:ジョエル・マクニーリイ 日本語吹替版エンディングテーマ:湯川潮音「妖精のうた」

声の出演:深町彩里(ティンカー・ベル)、豊口めぐみ(ロゼッタ)、高橋理恵子(シルバーミスト)、坂本真綾(フォーン)、山像かおり(フェアリーメアリー)、石田彰(ボブル)、朴路美(ヴィディア)、高島雅羅(クラリオン女王)

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