森のリトル・ギャング

新宿ミラノ3 ★★

■人間って可愛くない

動物たちが冬眠から目覚めると、森の大部分は人間によってニュータウンになっていた。食料が少なくなって困っている動物たちの前に、流れ者のアライグマRJが現れ、人間の町にはおいしいものが沢山あると誘惑する。彼らのリーダーである亀のヴァーンは、慎重な性格もあって、なかなか乗り気になれない。が、世間知らずでお人好しな仲間たちは、RJに教えられたスナック菓子の味覚が忘れられず、ヴァーンよりRJの甘言に夢中になってしまう。

こうしてRJの指揮のもと、人間からの食料横取り作戦が開始されることになるのだが、実はRJは、横暴な熊のヴィンセントが貯め込んでいたスナック菓子に手をつけたことでそのすべてを台無しにしてしまい、ヴィンセントに1週間で食料を取り戻すという無茶な約束をさせられていたのだ。つまり、横取り作戦成功のあかつきには、それをRJが横取りしてヴィンセントに献上するという筋書きが隠されていたのだった。

このあとは、あの手この手を使った動物対人間の攻防がテンポよく展開されるので、あれよあれよという間に幕となるのだが、話の大筋に意外性がない。子供向けのアニメだし、「家族(この場合は仲間という意味だが)こそがグッドライフの1歩」というわかりやすいテーマでまとめるほかないのだろうが、攻防戦と動物のキャラクターが見所というのではつまらない。

唯一面白かったのは、人間をあくまで醜悪に描いていたことだ。害獣駆除会社の男や町の役員のヒステリックな女グラディスは最初から悪役扱いと決めていたのだろうが、子供やクッキー販売員の女の子までが可愛くないのは、あくまで動物目線の故か。そして、RJによる人間寸評が鋭い。曰く「人間は足が弱っている」「もっと食うために運動している」。が、これもそこまでだ。

ただ、動物たちのやっていることも、人間たちに生活圏を奪われたという大義名分はあるにしても、ようするに盗みでしかないわけで、子供向けアニメとしてはこのままでは手落ちではないか。

柵に囲まれて生活圏を大幅に制限させられている様は、意図したことではないにしても、イスラエルが築いたパレスチナ人居住区との分離壁を連想させる。が、とてもそんな大それた問題には踏み込むつもりはないのだろう。なにしろ、恰好のテーマとなるはずの環境破壊にさえ、ほとんど触れようとさえしないのだから。

 

【メモ】

炭酸飲料でメチャ元気になるリスのハミー。死んだふりが得意なオポッサムのオジーに娘のヘザー。強力な武器を持ち、人間の飼い猫に、猫になりすまして色仕掛けにでるスカンクのステラ。3つ子がやんちゃなベニーとルーのハリネズミ夫婦。

原題:Over the Hedge

2006年 84分 アメリカ サイズ:■ 日本語字幕:■

監督:ティム・ジョンソン、キャリー・カークパトリック 脚本:レン・ブラム、ローン・キャメロン、デヴィッド・ホセルトン、キャリー・カークパトリック 原作:マイケル・フライ、T・ルイス 音楽:ルパート・グレグソン=ウィリアムズ

声の出演:ブルース・ウィリス(RJ)、ギャリー・シャンドリング(ヴァーン)、スティーヴ・カレル(ハミー)、ワンダ・サイクス(ステラ)、アヴリル・ラヴィーン(ヘザー)、ウィリアム・シャトナー(オジー)、ユージン・レヴィ(ルー)、キャサリン・オハラ(ペニー)、ニック・ノルティ(ヴィンセント)、トーマス・ヘイデン・チャーチ(ドウェイン)、アリソン・ジャネイ(グラディス)