ベクシル 2077日本鎖国

新宿ジョイシネマ2 ★★★

■鎖国という壮大な話が最後は同窓会レベルに

ロボット産業で市場を独占していた日本はアンドロイドを開発。脅威を感じた国連は規制をかけようとするが、日本はなんと鎖国をしてしまった、というぶったまげたSFアニメ。荒唐無稽部分以外もアラの目立つ設定なんだけど、例えば『ルネッサンス』のような発想のつまらない作品に比べたらずっと評価したくなる。

舞台はハイテク技術が可能にした完全鎖国(妨害電波で衛星写真にも何も映らないようになっている)から10年後の2077年で、鎖国の間1人の外国人も入国したことのない日本が、いったいどう変貌しているのかという興味で引っ張っていく。

もっとも部分的には貿易は行われているらしく、大和重鋼のDAIWAブランドがアメリカにも入っているような描写がある。日本が市場を独占というのは、もうすでに現時点でも危うそうなのに、そして鎖国などしていたら余計取り残されてしまいそうなのに、引き合いがあるというのは大甘な設定としか思えないが、ま、これは日本人にとっての夢的発想として見逃しとこう。

しかしその10年の間に、日本人はすべてアンドロイド化されてしまったというのだ。そればかりか、日本は陸地としての形は残っているものの山も川も街もなくなっていて、わずかに東京の23区ほどの場所に押し込められた人間(じゃないか)たちが、戦後の闇市のようなスラムで生活していた。そして日本を牛耳っているのは、国家ではなく東京湾の沖合の人口島にある大和重鋼という企業体だった。

鎖国に至った経緯(国際関係)も、一研究者のように見えたキサラギが大和重鋼の社長(途中でなったのか?)で、それも昔は彼だっていったんは逮捕されるような状況(この時は日本もまだ国家として機能していた)だったのに、大和重鋼がいつ日本のすべてを支配してしまったのかもよくわからない。国土の荒廃は金属を食い尽くすジャグによるものと推測されるが、しかしそれだったら何でジャグが入れないように外壁で囲まれている東京までが平坦なのか。

どんな状況を持って来ても私は大歓迎。想像を絶するくらいの設定の方が楽しいのだけど、それに類推可能な部分だってあるのだが、でもやっぱり詳しい説明はしてくれないと。2時間近くでまとめなくてはならない制約があるにしても、ここまで情報不足ではまずいだろう。日本人がアンドロイド化された(が人間としてのかけらが残っている)ことについては説明があったが、なにしろ状況が奇異すぎるから、説明しだすときりがなくなってしまうのかもしれない。

それと関係があるのかないのか、判明したベクシル、レオン(ベクシルの恋人で日本潜入部隊の生き残り)、マリア(レオンは昔の恋人)、キサラギ(マリアとは学生時代からの知り合い)の関係は、お友達繋がりの同窓会のようで、わかりやすいけれどあまりにこぢんまりしすぎだ。その他大勢はアンドロイドなのかもしれないが、悪役はキサラギとサイトウだけで、日本にしても東京の一角と人口島しか語るべき部分が残っていないのでは、どうにもこうにも薄っぺらでなものにしかみえない。

最初に『ルネッサンス』を引き合いに出してしまったが、キサラギも「私たちは進化の最終形態」「人間を母体にした体は選ばれたものだけが進化を遂げ、今や神とは私のことだ」などと『ルネッサンス』のイローナと似たようなことを口走る。ただそう言いながらキサラギ自身は、まだ出来損ないの技術を自分に使うことはためらっていたらしい。実験材料が日本にはいなくなってアメリカにアンドロイドを送り込んだりしていたのだが、逆に感づかれ特殊部隊のSWORDに日本潜入されてしまったというわけだ(これが物語の発端)。

キサラギの正体については、妨害電波を一時的に破って確認した生体反応が3つで、ベクシルとレオンを引くと……というあたりや、キサラギがペットのジャグの頭を撫でてやっている場面があって、こういうわかりやすい観客サービスはいいのだけど、最後にジャグの力を借りて人口島を壊滅させるあたりでは、また説明不足が徒となって乗れなくなってしまう。

ジャグはこの距離は飛べないという説明がぴんとこなかったし、そもそも通路には金属がまったく使われていないのか(ジャグ対策がされているのかもね)、キサラギに通じていたスラムの議長の行動(スラムの外壁を開ける)とか、疑問だらけなのだ。

そういえば、日本に侵入したベクシルはスラムの光景を見て「みんな生き生きしている」と驚いていたが、なに、鎖国をしていない日本以外の世界も決してユートピアにはなっていないってことなのね(ま、そうだろうけど)。ベクシルは「あなたたちが守ろうとしているのは、失って初めて大切だと気づいたもの」とも言っていたけど、そっちは失う前にすでになくしてるんじゃ……。それに、ここを強調してしまうとキサラギのしてきたことを断罪できなくなってしまいそうだ。

マリアがキサラギと運命を共にして、日本は滅亡。そこに特殊部隊のヘリがやってきてベクシルとレオンは助かるのだけど、これがなんだかハリウッド的で。だいたい何でアメリカ女性(に見えないんだけど)のベクシルを主人公にしたのかしらね。

絵の方は「3Dライブアニメ」とかいう方式で作られているらしいが、そちらの興味はあまりなく、よくわからない。でもなかなか迫力のある映像になっていた。ただ表情はもの足りない。出来ればCGにして欲しかったが、それだと予算的に無理なんだろうか。

 

2007年 109分 ビスタサイズ 配給:松竹

監督:曽利文彦 プロデューサー:中沢敏明、葭原弓子、高瀬一郎 エグゼクティブプロデューサー:濱名一哉 脚本:半田はるか、曽利文彦 音楽:ポール・オークンフォールド 主題歌:mink『Together again』
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声の出演:黒木メイサ(ベクシル)、谷原章介(レオン・フェイデン)、松雪泰子(マリア)、朴路美(タカシ)、大塚明夫(サイトウ)、櫻井孝宏(リョウ)、森川智之(キサラギ)、柿原徹也(タロウ)

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