GOAL! 2

新宿ミラノ3 ★

■おそろしくつまらない

ここまでつまらない映画というのも珍しい。最初から3部作ということが決まっていることが裏目に出たか。こんなことでワールドカップ篇が作れるのか心配になる(ちゅーか、今は観たくない気分)。

ガバン・ハリス(アレッサンドロ・ニヴォラ)の不振が続くレアル・マドリードは、補強策としてニューカッスルでゴールを量産しているサンティアゴ・ムネス(クノ・ベッカー)に白羽の矢を立てる(一足先にハリスはレアルに移籍してたのね)。日本での契約交渉を経てサンティは晴れてスター軍団レアルの一員となるのだが、婚約者のロズ・ハーミソン(アンナ・フリエル)に相談もなく決めてしまったものだから、彼女に不満がくすぶることになる。

契約に縛られたサンティの代わりにロズがイギリスからスペインに行ってばかりなのに、サンティの方は豪邸を買い、ランボルギーニを乗り回し、おまけに独身男ハリスの気ままな生活に影響されてと、ロザの疎外感には気付かなくはないのだが、まるで自分たちのことではないような気分でいるのだ。

第1作で成功への道を掴むまでの過程に比べると、すでにニューカッスルではスターで、さらにレアルの一員になって、スタメンとしては使ってもらえないものの「スーパーサブ」として活躍中とあっては、その華やかさに触れないわけにはいかなかったのだろうが、やはりこんなではサンティの心境同様に浮ついたものになるしかない。

それではあんまりと、ロザとの行き違いの他、エージェントのグレン・フォイ(スティーヴン・ディレイン)との決別などでサンティを苦しめるのだが、さらにサンティにとって父の違う弟エンリケ(ホルヘ・ガルシア・フラド)を登場させている。家を捨てた母のロサ(エリザベス・ペーニャ)がスペインで生んだ子という。

ただこのエンリケの描き方は雑で、話を壊している。父親がちゃんと酒場を経営しているのに、エンリケは貧困が不満で、兄なら何故助けてくれないとロサにあたる。それだけでなく、財布は盗むし、サンティのランボルギーニを乗り回して事故まで起こしてしまうのだ。まだ子供とはいえ、ここまでやらせてしまうと同情しにくくなる。ロサは、サンティは別世界の人とエンリケを諭すのだが、とはいえサンティが兄ということを教えたのはそのロサではないか。

母親との再会は、家族を捨てた女をどう説明するかにかかっていると思うのだが、これはロサを暴行した2人の1人が伯父で、父にも言えず家を飛び出し、3週間たって戻ってみたら誰もいなかった、と納得の理由を用意してみせる。が、ロサにただ弁解させているだけだから芸がない。物語は作れても、それをどう見せるかがわかっていないのである。

この他にも、初先発でのレッドカード、遅刻、監督との確執、エージェントに騙されたハリスがサンティの元に来ての共同生活、サンティの怪我、記者への暴行、美人キャスター、ジョルダナ(レオノア・バレラ)とのパパラッチ写真といろいろあるのだが、全部が何事もなかったかのようにおさまってしまうのだ。

なにしろ、1番難題なはずのロザとのことも、サンティの謝りの電話であっさり和解、ではね。で、そこには身重になっている彼女のカットが入っていた。女はどうしても男に振り回される立場になるものね。だから、そもそもロザの要求はサンティには酷。サンティがレアルに入ることを決めた時点で(これはロザでなくサッカーを選んだのだから)結婚を解消するか、ロザがスペインに行くしかなかったのだ。

あと話題(?)のベッカム、ラウール・ゴンサレス、ジダン、ロナウドたちとの夢の共演だが、ほとんどがロッカールーム要員という肩すかし。ベッカムはちょっと特別扱いになっていて(チラシもサンティ、ハリス、ベッカムの3人だものね)最後にはゴールを決め、レアルはアーセナルを破ってヨーロッパチャンピオンに。まあ、いいけどさ。それにそのベッカムももうレアルを離れる(た)んだよね。

それほど熱心なサッカーファンではないのでよくわからないのだが、サッカー場面は映像的にも一応様になっていたのではないか。ただ、試合の中でのそれを見せていたとはとても思えない。試合を映画で見せるのが難しいから、いろいろな要素を詰め込まざるを得なかったのだろうけど、それもことごとく失敗してたのはもうすでに述べたとおりだ。

原題:GOAL II: living the Dream

2007年 114分 スコープサイズ イギリス 配給:ショウゲート 日本語字幕:岡田壮平

監督:ジャウム・コレット=セラ 製作:マット・バーレル、マーク・ハッファム、マイク・ジェフリーズ 製作総指揮:スチュアート・フォード 原案:マイク・ジェフリーズ 脚本:エイドリアン・ブッチャート、マイク・ジェフリーズ、テリー・ローン 撮影:フラヴィオ・マルチネス・ラビアーノ プロダクションデザイン:ジョエル・コリンズ 音楽:スティーヴン・ウォーベック
 
出演:クノ・ベッカー(サンティアゴ・ムネス/サンティ)、アレッサンドロ・ニヴォラ(ガバン・ハリス)、アンナ・フリエル(ロズ・ハーミソン)、スティーヴン・ディレイン(グレン・フォイ/エージェント)、レオノア・バレラ(ジョルダナ・ガルシア/キャスター)、ルトガー・ハウアー(ルティ・ファン・デル・メルベ/監督)、エリザベス・ペーニャ(ロサ・マリア/サンティの母)、ホルヘ・ガルシア・フラド(エンリケ/弟)、ニック・キャノン(TJ・ハーパー)、カルメロ・ゴメス(ブルチャガ/コーチ)、フランシス・バーバー(キャロル・ハーミソン/ロズの母)、ミリアム・コロン(メルセデス/祖母)、キーラン・オブライエン、ショーン・パートウィー、デヴィッド・ベッカム、ロナウド、ジネディーヌ・ジダン、ラウール・ゴンサレス、イケル・カシージャス、イバン・エルゲラ、ミチェル・サルガド