13/ザメッティ

シネセゾン渋谷 ★★☆

■ランプが点灯したら引き金を引け!

青年が謎のチケットに導かれるように行った先は……というミステリー仕立ての物語だが、謎解きというほどのものはないし、展開も順を追った単純なものだ。大方の人間は観る前に、内容はともかく集団ロシアンルーレットがあるということは知っているから、それについての驚きがあるわけでもない。が、何も知らない青年が狂気の場に放り込まれ、しかし後戻りは出来ずにゲームが進んでいく中で、観客のほとんどは完全に青年と一体になり、青年と同じ恐怖を味わうことになる。

ただ、残念なのは、それだけの映画でしかないということだろうか。

青年はグルジア移民の22歳のセバスチャン(ギオルギ・バブルアニ)で、屋根修理の仕事中に依頼主のジャン=フランソワ・ゴドン(フィリップ・パッソン)が大金が手に入る話をしているのを耳にする。が、その金儲けの連絡の手紙をまっていたゴドンは薬物中毒で死んでしまう。ロシアンルーレットの恐怖に耐えられず、参加者の多くはモルヒネを打っていたという話があとで出てくるが、しかしゴドンの薬物中毒がそうかどうかはわからない。生き残りであるならすでに大金を手にしていそうなものだが、妻や友人との会話からはとてもそういう状況には見えない。

ゴドンの急死で、セバスチャンが内容もわからない手紙を盗み、その中にあったホテルの領収証とパリ行きの指定券(しか入っていない)に誘われるように列車に乗り込みホテルに向かったのは何故か。仕事は中止になるし、今までの賃金すらすんなりとは払ってもらえそうもなさそうなので、セバスチャンも金に困っていることは確かなのだが、1番はやはり単なる好奇心ではないか。この状況でこの行動にでる人間はいくらでもいそうだからだ。

映画はすべてセバスチャンの目線になっていることもあって、肝腎なことはわからず終いのことが多い。しかし矛盾することを言うようだが、この説明はもう少しだけなら削ぎ落とした方がよかったような気もする。どこと言われても困るし、淡々とした流れだって決して悪くないとは思うのだが、この内容なら1時間くらいに収めるべきだろう。

警察が追っていることは主催者も気付いているらしく、ひとつ前の駅で降ろさせたり、駅のロッカーに指示書をおいたり、車を乗り継がせて、セバスチャンを郊外にある館に連れていく。そこにはアラン(フレッド・ユリス)という男が待っていてゴドンでないことを不思議がる。異様な雰囲気にさすがに身の危険を感じたセバスチャンは帰ろうとするが、許されるはずもない。

ここからやたらリアルで緊張を強いられた集団ロシアンルーレット場面に入っていくのだが、後になって考えてみると意外に雑なゲームのような気もしてくる。

優勝者にも85万ユーロの金が出るのだから、単純にお金の問題だけではなく(中には切実そうな者もいたが)命を賭けたショーを見たいという気持ちがかなり強そうなのだ。金持ちの暇つぶしなのか。参加者が13人なのはたまたまで、トルコでは42人だったという。

最初は1発から始まりゲームが進むと弾数を増やしているが、ショーという意味だけなら、それでは進行が速すぎないか。そして、それなのに4人残った後はくじで、2人の対決にさせているのもわからない。最後の2人での勝負など、2人とも死んでしまうことだってありそうなのだが(だから予備として、2人を残したのか)。

ロシアンルーレットをやっている当人たちにとっては、最初のうちは自分が相手を殺すことよりも相手から殺されないことが重要になる。といったってこれもすべて運次第で、だからフライングもそうは意味がないし、恐怖でなかなか引き金を引けずにいたセバスチャンが撃たれずに残ることにもなる。が、ここで本当に恐怖を味わったのはセバスチャンの前にいた男なのだが。

セバスチャンは、いままでに3度このゲームを勝ち抜いてきた(理由が明かされないのであればこんな設定にしない方がいい)というジャッキー(オーレリアン・ルコワン)との戦いにも勝利(というよりただ運がよかっただけなのだが)し、賞金を手にする。

解放されたセバスチャンは賞金を家族に郵送し電話するが、ホームで警察に捕まり尋問を受ける。警察はゴドンの代わりに行ったが拒否されたというセバスチャンの言葉など信じてはいなかったが、金も持っていないし、彼がそこにあった車のナンバーを供述したことで放免となる。が、悪運もここまで。駅でジャッキーの弟に見つかり殺されてしまう。

このオチは安易だ。もうひとひねりがないと、集団ロシアンルーレットだけ、といつまでも言われてしまうだろう。

【メモ】

予告篇では、集団ロシアンルーレット場面で画面が暗くなるので、てっきりランプが消えるのが合図になって行われるのだと思い込んでいて、それだと別の方向に撃ったりしゃがんでしまったりしないかといらぬ心配をしていたが、まったくの思い違いだった。そりゃそうだよね。

監督自身の手によるハリウッドでのリメイクが決定している。

原題:13 Tzameti [グルジア語で数字の13]

2005年 93分 シネスコサイズ モノクロ フランス、グルジア R-15 日本語字幕:■

監督・脚本・制作:ゲラ・バブルアニ 撮影:タリエル・メリアヴァ 編集:ノエミー・モロー 音楽:イースト
 
出演:ギオルギ・バブルアニ(セバスチャン)、パスカル・ボンガール(闇のゲーム進行役)、 オーレリアン・ルコワン(ジャッキー)、フィリップ・パッソン(ジャン=フランソワ・ゴドン)、オルガ・ルグラン(クリスティーヌ・ゴドン/ゴドンの妻)、フレッド・ユリス(アラン)、ニコラス・ピグノン、ヴァニア・ヴィレール、クリストフ・ヴァンデヴェルデ、オーグスタン・ルグラン、ジョー・プレスティア、ジャック・ラフォリー、セルジュ・シャンボン、ディディエ・フェラーリ、ゲラ・バブルアニ

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