ホリデイ

109シネマズ木場シアター5 ★★☆

■何故かエピソードが噛み合わない

恋に行き詰まった女性が、憂さ晴らしにと、ネットで流行の家交換(ホーム・エクスチェンジ)をし、2週間のクリスマス休暇に「別世界」を手にする。日本では発想すら難しそうな家交換だが、家具付き賃貸物件が一般的という欧米ではそれほど違和感はないのかも(それにしてもね)。

ロンドンで新聞社の編集の仕事をしているアイリス(ケイト・ウィンスレット)は、3年も想い続けているジャスパー(ルーファス・シーウェル)の仕事場での婚約発表(つまり相手も職場の人間)に、目の前が真っ暗になって……。

ロサンジェルスで映画の予告篇製作会社を経営するアマンダ(キャメロン・ディアス)は、仕事中毒故か恋人のイーサン(エドワード・バーンズ)とはしばらくセックスレス状態。だからってイーサンの浮気を許せるはずもなく……。

アイリスはプール付きの大邸宅にびっくりで大喜びだが、アマンダはロンドンの田舎のお伽話に出てくるような1軒屋には6時間で飽きてしまい、帰国を考え出す始末(雑誌ではなく本が読みたいと言ってたのだから、うってつけなのにね)。が、アイリスの兄グラハム(ジュード・ロウ)の突然の出現で、たちまち恋に落ちてしまう。

2週間ながら新天地でのそれぞれの生活+多分新しい恋は、家交換のアイディアが示された時点で誰もが先を読める展開で、だからこちらのワクワク度が先に高まってしまうからなのか、そうは盛り上がってくれなし、アイリスとグラハムの熱愛ぶりに煽られて、かえって腰が引けてしまったりもする。

謎だらけでやきもきさせられたグラハムには、ソフィとオリビアという2人の娘(子役がいい)がいて、家に押しかけたアマンダは4人で楽しい時を過ごす。三銃士のイメージは重なるし、オリビアの「女の人が来たのは初めて、うれしいな」というグラハムへの応援にもなるセリフには本当にうれしくなるし、グラハム演じるナプキンマンの微笑ましいこと。

アマンダとアイリスの電話中にグラハムからもかかってきて、アイリスが中継役になるアイディアもいいし、2人は最初こそいきなりセックスになってしまったものの、途中からはキスそのものを楽しんでいるようで好感が持てる(あれ、腰が引けてたって書いたのに)。

そういう工夫は沢山あるのに、何でなんだろ。

一方のアイリスもただ豪邸を楽しんでいるだけでなく、アマンダの元カレの友達で作曲家のマイルズ(ジャック・ブラック)と知り合いになる。マイルズはやはり浮気されての失恋病男で、アイリスと同じように「便利でいい人」なのがミソ。だからこちらは2人共、元の恋人に決着を付けてからやっと恋が始まる。2人共恋人に復縁を迫られるあたりも似ているのだな(ジャスパーはわざわざロンドンからやってくるのだ)。

アイリスはまた、たまたま知り合った90歳の元脚本家アーサー(イーライ・ウォラック)にも、君が主演女優だと励まされる。実はこの老脚本家がらみの挿話は、アイリスが家にこもっていた彼に手を貸して、祝賀会に出かけていくようになる場面があるように、時間もそれなりに使っているのだが、何故か機能しているとはいえない。その証拠に、アーサーが祝賀会の壇上で話しているのに、アイリスとマイルズでお喋りしてしまう場面があるのだけど、これはないでしょう。

マイルズには、いつものジャック・ブラック調で映画ネタをふんだんに語らせたり(『卒業』ではビデオ屋で、ダスティン・ホフマンに「顔がバレたか」と言わせるわかりやすいカメオシーンまである)、アマンダには映画の予告篇のように自己分析してしまう場面が何度かあったりと、先にも書いたように細かな工夫が多い。

極めつけは、15歳で親が離婚したことから強くならねばと頑張って泣けなくなっていたアマンダが、泣き虫のグラハムと大泣きすることだろうか。でもね。

この噛み合わなさは何故なのか。結末が読めていたから。切実さが伝わらないから。ふむ。
よくわからんのだが、とにかくそういう印象のまま終わってしまったのだな。基本的には女性の目線での願望映画だから私には合わなかったのかも。

2週間が終わったらどうするのかって問題が残るとは思うのだけど、最後は4人共(子供たちも)ロンドンで楽しそうにしていました。ここから先は、考えてもしょーがないしょーがない。

【メモ】

グラハムは妻とは2年前に死別。謎だったのは、週末に子供を預けて独身男のように振る舞っていたからで、携帯に違う2人の女性の名前を見たアマンダは余計勘違いしてしまう。

三銃士のように暮らしていたというアマンダのセリフが、子供たちによってなぞられる。

映画ネタは『炎のランナー』『ミッション』など。他にリンジー・ローハンとジェームズ・フランコの映画の予告篇(これは架空か)も。それと元脚本家の机にはオスカー像が見えた。

原題:The Holiday

2006年 135分 ビスタサイズ アメリカ 日本語字幕:古田由紀子

監督・脚本:ナンシー・マイヤーズ 製作:ナンシー・マイヤーズ、ブルース・A・ブロック 製作総指揮:スザンヌ・ファーウェル 撮影:ディーン・カンディ 美術:ジョン・ハットマン 衣装デザイン:マーリーン・スチュワート 編集:ジョー・ハッシング 音楽:ハンス・ジマー
 
出演:キャメロン・ディアス(アマンダ)、ケイト・ウィンスレット(アイリス)、ジュード・ロウ(グラハム)、ジャック・ブラック(マイルズ)、イーライ・ウォラック(アーサー)、エドワード・バーンズ(イーサン)、ルーファス・シーウェル(ジャスパー)、ミフィ・イングルフィールド(ソフィ/グラハムの長女)、エマ・プリチャード(オリビア/グラハムの次女)、シャニン・ソサモン(マギー)、サラ・パリッシュ(ハンナ)、ビル・メイシー(アーニー)、シェリー・バーマン(ノーマン)、キャスリン・ハーン(ブリストル)

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