ブラッド・ダイヤモンド

新宿ミラノ1 ★★★

■ディカプリオが主演なのにキスシーンがない

最近アフリカを舞台にした映画が多いが、これもアフリカのダイヤモンドをめぐる利権を描いた作品。ダイヤの争奪戦が悪玉と善玉という切り口で描かれるのはこの作品も同じだが、善玉側に立場の違う3人を配して、ダイヤを通して見えてくる欲望を、ダイヤに翻弄される姿を、そしてダイヤを仲介してできた絆を、角度を変えて映しだす。

1999年のシエラレオネ。反政府軍RUFに拉致されたソロモン・バンディー(ジャイモン・フンスー)はダイヤモンドの採掘場で強制労働をさせられる。そこで偶然100カラットほどの大粒のダイヤを見つけて隠すが、政府軍の襲撃にあって捕まってしまう。

メンデ人の漁師にすぎないソロモンにとって何より大切なのは家族。愚直な彼は見つけたダイヤを、拉致で引き離された家族を取り戻す駆け引きの道具にする、というのが映画の設定だが、彼にももう少し欲をまぶしておいた方が、流れとしては自然になったのではないか(と考えるのは私が俗なだけか)。

ダニー・アーチャー(レオナルド・ディカプリオ)はローデシア出身の元傭兵。アフガニスタンやボスニアにもいたという。今はシエラレオネの反政府組織から武器と交換で手に入れたダイヤを密売業者に流している。彼の立場は複雑だ。足を洗いたいと思っているが、南アフリカにある秘密の武装組織の大佐(アーノルド・ヴォスルー)にも借りがあるようで、そう簡単には今までのしがらみから抜け出せそうもない。

密輸に失敗したダニーは刑務所に投獄されるが、そこでRUFのポイズン大尉とソロモンのやりとりを聞いて巨大なピンク・ダイヤの存在を知る。ダニーにとってはピンク・ダイヤはこの世界から抜け出すチャンス。とはいえ、状況によっては長年身に染みついた悪が、どう作用するかは彼自身にもわからなさそうだ。

釈放されたダニーは、バーでアメリカ人ジャーナリストのマディー・ボウエン(ジェニファー・コネリー)と出会う。彼女はRUFの資金源となっているダイヤ密輸ルートを探っていて、ダニーの正体を知ったことで、匿名でいいからと情報提供を求めてくる。

マディーが追っているのは密輸の証拠か、ジャーナリストとしての名声か。自分の書いた記事を読んだからといって誰かが助けにくるわけではないし、また自分が悲しみを利用して記事を書いていることも自覚している。とはいえ「確かにひどい世だが、善意もある」と思っていて、ダニーにはそれがないと言い放つ。

ダニーは裏から手を回してソロモンを釈放させ、彼にはダイヤと引き換えに家族探しを手伝うことを、マディーにはジャーナリストの持つ情報でソロモンの家族を探してくれれば密売の情報を提供することを持ちかける。

それぞれの思惑を持った3人が目指すのは、ギニアにあるアフリカで2番目に大きい難民キャンプであり、ソロモンの息子ディア(カギソ・クイパーズ)がRUFによって少年兵に仕立て上げられたところであり、ピンク・ダイヤの隠し場所である。

キャンプでソロモンは妻と娘に再会するが、ディアの行方はわからない。難民が100万人もいるのに簡単に見つかってしまうのは映画だから仕方がないのか。それとも難民リストで行き先が判明したくらいだから、意外とそういう情報は整理されているのか。難民に反乱兵が紛れ込んでいる可能性があるので停戦までは解放しないというようなことも言っていたが、だとすると難民キャンプというのは収容所でもあるのか。

そんなことは考えたこともなかったが、むろん、映画はそこにとどまってなどいない。あくまで娯楽作だから、市街戦にはじまって、内戦も激化するし、少年兵の襲撃があったり、ダニーの要請した大佐の軍隊がやってきたりと、アクションシーンでも大忙しだ。が、殺伐とした風景を続けて見せられたせいか、感覚が麻痺してしまって、単調にさえ感じていたのだから困ったものだ。

ディアを見つけたソロモンが、その息子から銃を突きつけられる場面は衝撃的だが、ソロモンの説得でおさまるのを当然と思って観ていては、あきれられてしまうかも。しかし前半にあった少年兵に育てあげていく場面はすごみがあった。そうしてこれは、形こそ違え9歳で両親を殺され(母親はレイプも)、傭兵になっていたダニーの生い立ちではなかったか。

映画はRUFから子供たちを取り戻して助けている元教師のベンジャミン(ベイジル・ウォレス)を登場させて希望を語らせ、ソロモンにも「あの子が大人になって平和になればここは楽園になる」と言わせているのだが、さすがに素直にはうなずけない。

ダニーはソロモンの願いを叶え、ピンク・ダイヤも手に入れるのだが、深手を負い、自分の運命を知ることになる。追っ手をひとりで迎えるちょっとかっこつけの場面ではあるが、ディカプリオいいかも。ソロモンに「息子と家に帰れ」と言うセリフは、自分のような人間を作るなと言っているようだ。

最後のマディー(はすでにダニーに密輸について書かれた手帳を託されて立ち去っていた)との電話は、ソロモンのことをたのんだ他は会えてよかったといった簡単なものだが、これも泣かせる。そういえば最初の方とはいえ、マディーには「あなたが証言を拒み、私と寝る必要がないなら去ってよ」とまで言わせていたくせに、あのまま2人はキスもしていなかったのな。

最後は、ロンドンでマディーが取引の写真を撮り、真相が書かれ、ソロモンの証言も得てダイヤ密輸のからくりが暴かれる。これが付け足しのように思えてしまうのは、ダニーによってリベリアに空輸したあとリベリア産の偽造書類で輸出というのがすでに観客(マディーに言ったのだが)には周知ということもあるが、ディカプリオを山で殺してしまったからとかね。

2003年にはキンバリープロセス(ダイヤモンド原石の国際認証制度)の導入で紛争ダイヤが阻止されるようになり、シエラレオネは平和になったが、まだ20万の少年兵がいるというような内容の字幕がでる。あまりにも簡単に平和という言葉がでてきたので、疑ってしまったが、内戦が終結したという意味でなら本当のようだ。ただこの少年兵というのは、どこにどうやっているのだろうか。

どうでもいい話だが、デビアス社の給料3ヶ月分のダイヤモンドのCMは流れなかった。ってあれが映画館であきるほどかかっていたのはもう10年?くらい前でしたね。

 

【メモ】

1999年を印象付けるのに、アフリカのテレビでもクリントンの不倫が流れていた、という演出。いつまで経ってもこうやって使われちゃいますねー。

元教師のベンジャミンがRUFから子供を助けることなど不可能そうだが、彼によると地元の司令官は昔の教え子なのだそうだ。

〈070517追記〉ウィキペディア(Wikipedia)の「ブラッド・ダイヤモンド」の項目に「この映画では、反政府勢力のRUF側にのみ少年兵が登場するが、実際にはシエラレオネ政府軍も少年たちを兵士にしていた」という記事があった。

原題:Blood Diamond

2006年 143分 シネスコサイズ アメリカ 日本語字幕:今泉恒子

監督:エドワード・ズウィック 製作:ジリアン・ゴーフィル、マーシャル・ハースコヴィッツ、グレアム・キング、ダレル・ジェームズ・ルート、ポーラ・ワインスタイン、エドワード・ズウィック 製作総指揮:レン・アマト、ベンジャミン・ウェイスブレン、ケヴィン・デラノイ 原案:チャールズ・リーヴィット、C・ギャビー・ミッチェル 脚本: チャールズ・リーヴィット 撮影:エドゥアルド・セラ プロダクションデザイン:ダン・ヴェイル 衣装デザイン:ナイラ・ディクソン 編集:スティーヴン・ローゼンブラム 音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード
 
出演:レオナルド・ディカプリオ(ダニー・アーチャー)、ジャイモン・フンスー(ソロモン・バンディー)、ジェニファー・コネリー(マディー・ボウエン)、マイケル・シーン(シモンズ)、アーノルド・ヴォスルー(大佐)、カギソ・クイパーズ(ディア・バンディー)、 デヴィッド・ヘアウッド(ポイズン大尉)、ベイジル・ウォレス(ベンジャミン・マガイ)、 ンタレ・ムワイン(メド)、スティーヴン・コリンズ(ウォーカー)、マリウス・ウェイヤーズ(ヴァン・デ・カープ)

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