新宿ミラノ2 ★☆
■何をやってもいいわけがない
宣伝も派手だったし、たまたま宮部みゆきの小説を続けて読んだこともあって期待してしまったが、恐ろしくつまらない作品だった。なにしろ展開が速すぎるのだ。長篇の映画化だから仕方がない面はあるにしても、緩急はつけないと。最初から最後までせっつかれていては物語に乗れない。
両親の離婚と母がそのショックで倒れてしまうという危機に直面した小学5年生のワタル。
謎の転校生ミツルの言葉に誘われるように、幽霊ビルの階段の上にある運命を変えるという扉を開く。そこはヴィジョン(幻界)と呼ばれる異世界で、ワタルは5つの宝玉を見つけ、女神のいる運命の塔を目指して旅に出る。という少年の成長物語。
宝玉の話もありきたり(どこぞのスタンプカードみたいに最初の1個はすでにあったりするのね)なら、途中、仲間ができていくくだりも定番ともいえるものだ。それはかまわないのだが、多分そこに至る過程をごっそり省略してしまっているから、キ・キーマやカッツ、それにミーナたちは、キャラクターとしての存在感も薄いし、なによりワタルとの連帯感が感じられないときてる。ミツルに至っては関係も一方的で、2人はとても友達とは思えない。
これでは「オレのためだけに生き」て、どこかで間違ったというミツルと、「願い事のためだったら何をやってもいいのかな?」と迷い、最後にはもう1人の自分と決着をつけ、運命を受け入れることになるワタルという対比が台無しだ。
せっかくのこのテーマを台無しにしているのは、ラストの描き方にもある。ワタルの運命は変わらないのに(離婚の成立、母は元気に)、ミツルの運命は変わっている(妹は生きている)のはどう解釈すればいいのだろう。一応子供向け映画でもあるのだから、ここはもっと単純でよかったのではないか。
そういえばイルダ帝国ってなんだったんだろ? 魔の力が解き放たれて戦争とかしてたよな。私には最後まで関係ない世界の話で、ワタルのようにヴィジョンを救わなきゃとは思えなかったのね。
【メモ】
雨粒がでかすぎ(雨を上からとらえたシーン)。
お試しの洞窟での「蛙は帰る」とんちはいただけない。
体力平均、勇気最低、総合評価35点で「見習い勇者」。
ドラゴンの子供の扱い。ネジオオカミ。ハイランダーになるワタル。
2005年 111分 アニメ
監督:千明孝一 、アニメーション制作:GONZO 、脚本:大河内一楼 、原作:宮部みゆき『ブレイブ・ストーリー』 、撮影:吉岡宏夫 、編集:瀬山武司 、音楽:Juno Reactor
声の出演:松たか子(三谷亘/ワタル)、大泉洋(キ・キーマ)、常盤貴子(カッツ)、ウエンツ瑛士(芦川美鶴/ミツル)、今井美樹(運命の女神)、田中好子(三谷邦子)、高橋克実(三谷明)、堤下敦[インパルス](犬ハイランダー)、板倉俊之[インパルス](若い司教)、虻川美穂子[北陽](小村克美/カッちゃん)、伊藤さおり[北陽](小川)、柴田理恵(ユナ婆)、伊東四朗(ラウ導師)、石田太郎(ダイモン司教)、樹木希林(オンバ)