家人と新宿へ。コートを持って出たが、いらなかったなー。
武蔵野館2で『白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々』(Sophie Scholl - Die
letzten Tage)。
第二次大戦下のドイツにおける抵抗運動は、ヒトラー暗殺計画くらいしか知らないので興味があったが、白バラ運動そのものについては簡単な描写があるだけだった。
数人でビラを用意し、郵送後のあまったものをハンス・ショル(ファビアン・ヒンヌリフス)と、その妹のゾフィー・ショル(ユリア・イェンチ)がミュンヘン大学の構内でまくのだが、計画も行動も驚くほど杜撰なもので、逮捕されても当然としか思えない。
若さとはこんなものかもしれないが、数日後に死刑判決となり執行猶予なしの即日処刑が待っていようとは思ってもいなかったはずだ。
ゲシュタポ尋問官のモーア(アレクサンダー・ヘルト)の取り調べは、時に激昂するもののいたって紳士的で、日本人なら特高=拷問のイメージがあるので意外な感じすらした。このシーンは、はじめのうちこそモーアが優位に立っているのだが、次第にゾフィーペースとなっていく。近年になって新たに発見された尋問調書を元に忠実に再現されたということだが、モーアがゾフィーの逃げ道まで言うあたりは映画の脚色と思うが、どうなんだろう。
もっとも裁判となると一転して茶番となる。名前だけで何もしようともしない国選弁護士に、ヒステリックなだけの裁判長(アンドレ・ヘンニック)。コミュニストであることをゾフィーにうち明ける同房の女刑務官(彼女の立場がよくわからなんぞ)に、裁判長は元共産党員で睨まれているから厳しい判決になると聞かされるが、一方的に口汚く罵り続ける姿はもはや狂気でしかない。
ヒトラーは一人ではなかったことがよくわかるシーンである。そして、モーアの時と同じく、ここでも裁く側と裁かれる側が逆転してみえるのは映画のメッセージだろう。
それにしても、形式だけであっても裁判(尋問調書も残っているわけだから)が必要なんだからあきれてしまう。国家というのはそういうものなんだろうけど、個人レベルでしかものを考えられない私など、自分達のやっていることにそんなに自信が持てないのかってつい思ってしまうものねー。
最後のギロチンシーンはあとひくので体に毒。
映画が9:35〜10:40だったので、まだたっぷり時間がある感じ。ゆっくり食事をしたあと、ジュンク堂に行きIllustratorのマニュアル本を見る。
でも、こーやって小刻みに時間を使い出すと、もうとたんに早まわし状態になってしまってるのな。わからないところを拾い読みしただけで、どの本を買うかは決められないうちに時間がきてしまった。
CSでテキストがおかしくなるのは、Ver.10以前のもののようだ。となると庸ちゃんのは? CSで作ったと書いてきたが? それに、画像になってしまうって? わからないことだらけだ。
別の映画を観る家人とは別れ、シネマミラノで『大統領のカウントダウン』(Lichnyy Nomer Countdown)。
ロシア映画のアクション映画というのは私の記憶にないのだが、そりゃあ作られてるでしょう、こういうのだって。でもないのかな、よくわからん。
ポスターは「ロシア軍全面協力! 大国の本気を目撃せよ」だ。本気でハリウッド映画を目指したんだろうか。話はそれなりに大がかりなものが用意されてはいるが、なにしろところどころでもたつくし、主人公の連邦保安局諜報員スモーリン少佐(アレクセイ・マカロフ)は地味目。まあ、ロシア映画らしいってことかもね。
演出のもたつきは慣れとかもあるだろうけど、例えば、高度が下がったらプルトニウムが爆発するように仕掛けられた飛行機の中で、少佐は地上と連絡を取り合いハッキングで解決するのだが、そのあと飛行機を操縦してしまうのよね。そりゃないでしょー。だったらとりあえず高度上げといてから解除を頼めよな。着陸時には飛行機の故障も出てくるんだから、突っ込みを入れられないようにしておくのはそう難しくないでしょうに。
ま、そんな枝葉はともかく、チェチェン問題を題材にしてロシア軍が協力ともなれば、言いたいことはみえみえ。少佐が捕虜になって偽証させられたあたりは実話というが、アラブのテロ組織と国外追放されている大富豪が手を組み、チェチェン独立軍も彼らに利用されたのだ(チェチェン人で主人公に協力する人物も出てくる)ってことになると、胡散臭いとしかいいようがない(これも一方的な見方だけど)。
少佐の協力者になるのはアメリカ人?の女性ジャーナリスト、キャサリン。乗っ取られた飛行機の解決も西側との協力(サミット開催中のローマが標的になったということがあるにしても)でと、なんか必死ですなー。
それにしても'02年のモスクワ劇場占拠事件や'04年のベスラン学校占拠事件が、私ですらまだ生々しくイメージされるというのに、二千人収容のサーカス小屋を舞台にかえたとはいえ映画で再現し、半強行突入シーンまで挿入しているのはある意味すごいとしか……。
やることはやる、という国家の強い意志が感じられる映画でしたね。
続いて新宿東急で『SPIRIT』(霍元甲)。
ジェット・リー(李連杰:リー・リンチェイ)主演の格闘技アクション映画。フォ・ユァンジア(霍元甲)という実在の人物を演じているのだが、日本人には馴染みが薄いので、あ、でも『ドラゴン怒りの鉄拳』のブルース・リーはフォ・ユァンジアの弟子役だったそうな(私が覚えているわけないっす)。
実際のことはともかく、要するに日本人悪人説(この映画でも日本人に毒殺されてしまう)でのストーリー展開なのだが、それじゃまずいってんで中村獅童が、田中安野ってヘンな名前ながら、えらくおいしい役をもらって相殺されてるのね。マーケットを意識してのことにしても、中国も映画ではいろいろ気をつかってくれているようでやんす。悪者の原田眞人は『ラストサムライ』と同じようなイメージでしたね。
話よりアクション優先だからか、山村(少数民族にも配慮)でせっかく人間らしい生活を取り戻したというのに、天津に戻って最後の戦いにいたるあたりは、愛国心に目覚めたといっても少々手抜き。というか、そもそも武術に過信し、高慢になったことで恨みを買い、家族を失い、放浪の果てに助けられ、そこには可愛い盲目の娘が……ってありきたり。
アクションシーンはまずまず。早回しやワイヤーは許せる範囲で、多彩な技と対戦相手が用意されていて飽きさせない。巨漢のネイサン・ジョーンズとの戦いも面白いし、中村獅童もちゃんとした武道家に見えましたよ。
エンドロールに流れる主題歌が日本人のものに代えられていて、これが騒ぎになっているようだけど、やることが姑息ですな。こんなことをしても反感を買うだけなのに。
映画館を出ると強い雨。地下道に入るまでにリュックがぐっしょりになるが、清澄白河に着いた時にはほとんど上がっていた。 |