おっぱいバレー

2009年04月29日 水曜日

109シネマズ木場シアター4 ★★☆
109シネマズ木場ではこんなもん売ってました

■実は実話

頑張ってみたら何とかなるかもよ映画のひとつ。味付けは新任美人教師のおっぱい。って、えー!なんだけど、男子バレー部員たち(たって5人+あとから1人)のあまりのやる気のなさに、つい「本気で頑張るなら何でもする」と美香子先生が言ったことから、次の大会で一勝したら先生のおっぱいを見せると約束させられてしまったのだった。

ぬぁんと映画は、ほぼこの話だけで最後まで引っぱっている。なのでこの顛末は、さすがにうまくまとめてある(注1)。美香子がなんとか約束を反故にさせようとしたり、でも部員たちは「おっぱいあっての俺たち」だと取り合わないし、「おっぱいを見ることが美香子への恩返し」なんていう結論まで導き出して俄然やる気をおこし、メキメキ上達していく。で最後には美香子までが「私のおっぱいを見るために頑張りなさい」って。うへー。これは亡くなった恩師の家を訪問して、恩師の妻の昔話で気づかされたことや、おっぱいの件が問題になって学校を辞めざるをえなくなっての発言なのだけど。

でも結局、当然美香子のおっぱいは見られない。不戦勝という願ってもない事態には「すっきりした形で見たい」からと辞退してしまうし、美香子の応援で盛り返した試合も、本気になった強豪校が一軍にメンバーチェンジしてしまっては歯が立つはずもなく、なのだった。そりゃそうだ。そして、おっぱいは見られないからというのではないのだが、映画もそんなには面白くなかった。生徒の方はおっぱいは見られなくても、先生の胸に飛び込むことができて、別の満足を得たのだったが(胸に飛び込む練習もしていたというのが可笑しい)。

ひとつには映画の視点が生徒ではなく先生の方にあったことがある。もちろんそれでもかまわないのだが、でも美香子を中心にするなら、何の経験も関係もないバレー部に、いくら顧問にさせられたからといって、何故そこまでのめり込んだのかという前提部分はしっかり描いてほしいのだ。普通に考えれば顧問より授業に対する比率が多くなって当然なのに、そこらへんは割り切ってしまったのだろうが、だったらそれなりの説明はすべきだろう。

前の学校での美香子の嘘発言が生徒の信頼を裏切ってしまい、そのことがおっぱいを見せるという言質を取られることになるわけだが、これももう少し何か別の要因がないと、美香子は学校の先生としては未熟すぎるだけになってしまう。だいたい最初の新任挨拶で、高村光太郎の『道程』が好きと言って騒然となる朝礼場面からして、国語教師にしては言葉のセンスがなさすぎで(挨拶でなくとっさに出てしまったのならともかく)、頼りないったらありゃしないのだけど(注2)。

あとはやはりバレーをやっている場面がもの足りない。練習風景も試合も、もっと沢山見せてくれなくっちゃ。それもヘタクソなやつでなくうまい方のもね。

中学生のおっぱい見たい発言というのも、どうなんだろ。頭の中はそうにしても、口に出せただろうか。これは世代や時代(舞台は一九七九年の北九州)の差かもしれないので何とも言えないのだが、私のようなじじいなりかけ世代にはとても考えられない状況だ。

綾瀬はるかは、サイボーグに座頭市と、人間離れした役はうまくこなしていたと思うのだが、『ハッピーフライト』とこれはちょっと評価が難しい。

ところで映画のチケットを買うのに「おっぱい」という言葉をいうのが恥ずかしい人にと、「OPV」という略称が用意されていたが、恥ずかしいと思っているのがわかっちゃう方が恥ずかしかったりはしないのかしら。私はちゃんと言いましたよ、もう昔の中学生じゃないんで。題名を言わなきゃいけないのはシネコンだからだよね。ピンク映画のシネコンがあったとして(ないか)、どうしても観たいのがあったら、そりゃ恥ずかしいでしょうね。

注1:アイデアがひらめいた後、無理矢理話を考えていったのだろうと思っていたが、原作の『おっぱいバレー』は、著者である水野宗徳が実話を基に書いた小説のようだ。

注2:この場面を嘘っぽく感じたものだから、デッチ上げ話と思ってしまったのだった(って、この場面が原作にあるかどうかは知らないのだが)。

  

2008年 102分 シネスコサイズ 配給:ワーナー=東映

監督:羽住英一郎 製作:堀越徹、千葉龍平、阿部秀司、上木則安、遠藤茂行、堀義貴、西垣慎一郎、平井文宏 プロデューサー:藤村直人、明石直弓 プロデュース:堀部徹 エグゼクティブプロデューサー:奥田誠治、堀健一郎 COエグゼクティブプロデューサー:菅沼直樹 原作:水野宗徳『おっぱいバレー』 脚本:岡田惠和 撮影:西村博光 美術:北谷岳之 音楽:佐藤直紀 主題歌:Caocao『個人授業』 照明:三善章誉 録音:柳屋文彦

出演:綾瀬はるか(寺嶋美香子)、青木崇高(堀内健次/教師)、仲村トオル(城和樹/良樹の父)、石田卓也(バレー部先輩)、大後寿々花(中学時代の美香子)、福士誠治(美香子の元カレ)、光石研(教頭)、田口浩正(竜王中男子バレー部コーチ)、市毛良枝(美香子の恩師の妻)、木村遼希(平田育夫)、高橋賢人(楠木靖男)、橘義尋(城良樹)、本庄正季(杉浦健吾)、恵隆一郎(江口拓)、吉原拓弥(岩崎耕平)

ザ・バンク 堕ちた巨像

2009年04月29日 水曜日

109シネマズ木場シアター7 ★★★★

■映画史に残る美術館での銃撃戦

重要参考人から情報を引き出そうとしていたニューヨーク検事局の調査員を目の前で殺されてしまうインターポール(国際刑事警察機構)捜査官のルイ・サリンジャー、という場面がのっけにあって、まだ状況の掴めていない観客をいきなり事件に引きずり込む。何が起きたのかと茫然とするルイと同じ(じゃないが)立場になれるこのベルリン駅での導入がいい。

重要参考人はIBBCという欧州を拠点にした国際銀行の行員だったが、その彼も後に調べると、最初の殺人の九時間後には殺されていたことがわかる。もっとも謎は深まるというよりは一直線にIBBCへと向かう。そして、最後に変などんでん返しが待っているというのでもない。悪の正体こそ単純だが、ちょっとした手がかりから捜査をすすめていくサリンジャーたちと、次から次へと証拠(証人)を抹殺していくIBBC側とのやりとりが、緊迫したタッチで描かれていく。

インターポールとニューヨーク検事局との連係プレーというのが、よくわかっていないのだが、ニューヨーク検事局の調査員が殺されてルイは、彼の同僚で一緒に捜査にあたっていた女性のエレノア・ホイットマンを応援に呼ぶ。だいたいインターポールは直接逮捕はしない(と言っていた)んだってね。証拠集めが仕事(?)ならこのコンビもアリなんだろうけど、殺人が続いているから、大丈夫なのかと思ってしまう。

エレノアの存在は映画的味付けなのだろうが、無骨で時に悪人顔に見えてしまうクライヴ・オーウェンに、凛としたナオミ・ワッツの組み合わせはいい感じで、エレノアは「ちゃんと寝たのは? 食事は? 女と寝たのは?(そこまで訊くのかよ)」とサリンジャーのことを心配していた。ま、でも恋の方へはいかないのだけどね。

あらゆる手を使って証拠の隠滅をはかるIBBC側は、軍事メーカーの社長で次期イタリア首相候補でもあるウンベルト・カルビーニまでも選挙演説中に暗殺してしまう。カルビーニにまでなんとかたどりついたサリンジャーとエレノアは、彼との内密の会見でIBBCの狙いを訊きだした矢先だった。重要参考人をまたしても失ってしまう彼らだったが、暗殺現場に残された弾道の角度の違い(弾がうまいこと貫通してたのな)から、警官によって殺された狙撃者とは別の狙撃者の存在がいたことを知る。

この義足の殺し屋コンサルタントを追って舞台はニューヨークへと移り、映画の最大の見せ場となっているグッゲンハイム美術館での銃撃戦となる。美術館がボロボロになる(だからセットなのだろう)この場面は、映画史に残るといっても過言でない凄まじさだ。

IBBC側はコンサルタントの正体がばれそうになったため、サリンジャーもろとも消してしまおうと暗殺部隊を送り込んでくるのだが、これに対抗するためサリンジャーとコンサルタントが手を組むという予想外の状況が生まれることになる。美術館をまるごと(螺旋の回廊も効果的に使われている)、好き勝手に壊していくのも迫力あるが、それ以上に、この二人が息の合ったところを見せるというのがなかなかの趣向で、コンサルタントがいかに優秀な殺し屋だったかもわかる、出色の場面に仕上がっている。

場所も選ばず暗殺部隊を送り込んでしまっては現実離れもいいとこなのだが、これだけの映像が撮れたのだから文句は言うまい。IBBCが一九九一年に破綻したBCCI(国際商業信用銀行)のスキャンダルを実モデルにしているのは明白で、BCCIは金融犯罪以上のあらゆることをやっていたらしいから、殺し屋くらいは雇っていたかもしれないが、美術館に暗殺部隊を投入しちゃったら、そりゃ台無しだもんね。

カルビーニが語ったIBBCの狙いは、例えば武器取引で儲けようとしているのではなく、借金を支配したいというもの。借金の支配とはわかりずらいが、要するに何もかもが思い通りに動くようになれば、儲けなどあとからいくらでもついてくるというわけだろう。

結局サリンジャーはBCCIのスカルセン頭取側近のウェクスラーに接触し、彼が昔持っていた大義に働きかけ(ウェクスラー自身が贖罪を求めていると、サリンジャーはエレノアに言っている。もっとも彼も殺されてしまうのだが)、最後にはスカルセンを追い詰める。

スカルセンは追い詰められてなお「おまえに逮捕権はない」と言うのだが、サリンジャーは「誰が逮捕すると言った」と答える。すでにエレノアには、法の枠を超えた決着をつける、とカッコいい別れの挨拶をすませていたのだった(注)。

ド派手な美術館の銃撃戦のあとでは、最後は見せ場としては、イスタンブール市街の屋根づたいという素晴らしい景観はあっても、おとなしく見えてしまう。決着の付け方も目新しいものではないが、でも話を妙にいじらなくても、筋道をきちんと追っていけば十分娯楽作になることを証明してくれていた。

注:「君は正しい道を歩め、俺一人でやる」なんて、書き出すとちょっと恥ずかしくなるセリフだ。そもそも司法の中にいたのではIBBCは破滅させられないと、サリンジャーに逆に迫ったのはウェクスラーだったが。

原題:The International

2009年 117分 シネスコサイズ アメリカ、ドイツ、イギリス 配給:ソニー・ピクチャーズ PG-12 日本語字幕:松浦奈美

監督:トム・ティクヴァ 製作:チャールズ・ローヴェン、リチャード・サックル、ロイド・フィリップス 製作総指揮:アラン・G・グレイザー、ライアン・カヴァノー 脚本:エリック・ウォーレン・シンガー 撮影:フランク・グリーベ プロダクションデザイン:ウリ・ハニッシュ 衣装デザイン:ナイラ・ディクソン 編集:マティルド・ボンフォワ 音楽:トム・ティクヴァ、ジョニー・クリメック、ラインホルト・ハイル

出演:クライヴ・オーウェン(ルイ・サリンジャー/インターポール捜査官)、ナオミ・ワッツ(エレノア・ホイットマン/ニューヨーク検事局検事補)、アーミン・ミューラー=スタール(ウィルヘルム・ウェクスラー/スカルセン頭取の側近)、ブライアン・F・オバーン(コンサルタント/殺し屋)、ウルリッヒ・トムセン(ジョナス・スカルセン/IBBC銀行頭取)、ルカ・バルバレスキー(ウンベルト・カルビーニ/欧州最大の軍事メーカー社長、次期イタリア首相候補)