ウォッチメン

新宿ミラノ ★★★★

■スーパーヒーローがいたら……って、いねーよ

ぶっ飛びすぎのトンデモ映画のくせして(だから?)ムズカシイっていうのもなぁ(わかりにくいだけ?)。なんだけど、これだけ仰天場面を続出されては、はい降参、なのだった。ま、トンデモ映画好き以外には勧められないが。

できるだけ予備知識は持たずに映画と対面するようにしている私だが、今回は概略だけでも頭に入れておけばよかったと後悔した。殺人事件の謎解き話で始まるのに、背景説明が多く、物語が進まなくてくたびれてしまったからだ。だからってゆったりというのではなく、二時間四十三分をテンポよくすっ飛ばして行くのだけれど、これでは息つく暇がない。

というわけで、詳しく書く自信はないので、気になったいくつかをメモ程度に残しておく(機会があればもう一度観るか、原作を読んでみたいと思っている)。

スーパーヒーローがいたら世界はどうなっていたか、じゃなくて、こうなっていたというアメリカ現代史が語られるのだが、そのスーパーヒーローがヒーローらしからぬ者共で、そう、彼(彼女)らは複数でチームまで組んで活躍していたらしい(アメコミヒーローの寄せ集め的設定なのか)。私にはこの設定からして受け入れがたいのだけど、まいいか。

彼らの行動原理は正義の御旗の元に、というより悪人をこらしめることに喜びを感じる三文自警団程度のもので、制裁好きがただ集まっただけのようにもみえるし、どころか、コメディアンが自分が手をつけたベトナム女性を撃ち殺してしまうという話まであるくらいなのだ。そんなだから市民の方も嫌気がさして、ヒーロー禁止条約なるものまで出来てしまう。

Dr.マンハッタンだけは放射能の影響で神の如き力を得(だから厳密にスーパーヒーローというと彼だけになってしまう)、ベトナム戦争を勝利へと導く(ニクソンが三期目の大統領って、憲法まで変えたのね)が、とはえい冷戦が終了するはずもなく、だもんだから(かどうか)話のぶっとび加減は加速、フルチンDr.マンハッタン(火星を住居にしちゃうのな)は、自らの存在をソ連(というか人類)に対する核抑止力とすべく……。

イメージは充満しているのに細部を忘れてるんで(観たばかりなのに!)うまく書けないのだが、神に近づいたDr.マンハッタンは人間的感覚が薄くなっていて、だから恋人だったシルク・スペクターも離れていくし(んで、ナイトオウルのところに行っちゃうんだな)、それは個に対する関心がないってことなんだろうか。これはオジマンディアスも似たようなもので、人間という種が生き残ればいいらしい(1500万人も見殺しだからなぁ)。そして、それを平和と思っているらしいのだ。

神に近づくってーのは(本人は否定してたけどね)、そんなものなのかと思ってしまうが、聖書のノアの方舟など、案外これに近いわけで、でもその辺りを考えていくには、最初の方で神経を磨り減らしてしまっていて、後半のあれよあれよ展開には茫然となってしまったのだった(このことはもう書いたか)。なんで唐突なんだけど、おしまい(あちゃ! これじゃロールシャッハが浮かばれないか)。

そうだ、驚愕のビジュアルっていうふれこみだけど、そうかぁ。確かにそいうところもふんだんにあるが、ベトナム戦争の場面など、半分マンガみたいだったよね?

まともな感想文になってないが、今はこれが限界。正義の振りかざし方に明快な答えでもあるんだったら書けそうな気がするんだけど、それは無理なんで。

8/7追記:やっと原作を読むことができた。思っていた以上に作り込まれた作品で、やはり映画の相当部分を見落としていたことがわかった。原作を知らないとよく理解できない映画というのもどうかと思うが(もっとも今や映画が一回限りのものとは誰も認識していないのかも)、特にジオマンディアスの陰謀という核になる部分が、今(もう四ヶ月も経ってしまったから余計なのだが)、かなり薄ぼんやりしていて、よくそんなで感想を書いてしまったものだと後悔しているくらいなのだ。やはりこの作品はもう一度観なくては。けどDVDとかを観る習慣がないんでねぇ。いつのことになるかは?

  

原題:Watchmen

2009年 163分 アメリカ シネスコサイズ 配給:パラマウント R-15 日本語字幕:?

監督:ザック・スナイダー 製作:ローレンス・ゴードン、ロイド・レヴィン、デボラ・スナイダー 製作総指揮:ハーバート・W・ゲインズ、トーマス・タル 原作:アラン・ムーア、デイヴ・ギボンズ(画) 脚本:デヴィッド・ヘイター、アレックス・ツェー 撮影:ラリー・フォン 視覚効果スーパーバイザー:ジョン・“DJ”・デジャルダン プロダクションデザイン:アレックス・マクダウェル 衣装デザイン:マイケル・ウィルキンソン 編集:ウィリアム・ホイ 音楽:タイラー・ベイツ

出演:マリン・アッカーマン(ローリー・ジュスペクツィク/シルク・スペクター)、ビリー・クラダップ(ジョン・オスターマン/Dr.マンハッタン)、マシュー・グード(エイドリアン・ヴェイト/オジマンディアス)、カーラ・グギーノ(サリー・ジュピター/初代シルク・スペクター)、ジャッキー・アール・ヘイリー(ウォルター・コバックス/ロールシャッハ)、ジェフリー・ディーン・モーガン(エドワード・ブレイク/コメディアン)、パトリック・ウィルソン(ダン・ドライバーグ/ナイトオウル)、スティーヴン・マクハティ(ホリス・メイソン/初代ナイトオウル)、マット・フルーワー(エドガー・ジャコビ/モーロック)、ローラ・メネル(ジェイニー・スレイター)、ロブ・ラベル、ゲイリー・ヒューストン、ジェームズ・マイケル・コナー、ロバート・ウィスデン(リチャード・ニクソン)、ダニー・ウッドバーン

ストレンジャーズ 戦慄の訪問者

新宿ミラノ3 ★

■未解決事件をデッチ上げ解釈してみました(そうかよ)

プロポーズの場を演出した自分の別荘に、クリスティンを連れてきたジェームズだが、結婚に踏み切れるまでにはクリスティンの気持ちはなっていなかった。申し出を断られたジェームズは落胆し、頭を冷やそうと別荘を出ていく。

二人の微妙な位置関係がわかったところで、深夜の訪問者による恐怖に巻き込まれていく(実は最初のノックがあった時は少しだけいい雰囲気になりかけていた)のだが、手をかけて説明した二人の関係やその心理状態が、まったくといっていいくらい生かされていないのはどうしたことか。

どころか、恐怖に遭遇したことで、愛していると言い合ったりでは、あまりに情けないではないか。いや、人間なんてそんなものかもしれず、だからそこまで踏み込んで描けたら、それはそれで面白い映画になったような気もするのだが……。

思わせぶりな演出は、この手の映画にはつきものだからとやかく言わないが、相手は現実の三人で、そうか、「実際の事件」(これについては後述)と断っていただけあって、心霊現象なんていうインチキで逃げることはしないのだな、といい方に納得できてからは、逆にますますつまらなくなっていく。

ジェームズの親友のマイクが早めに来てしまったことで誤射事件という悲劇くらいしかアイデアがなく、あとはおどかしだけで突っ走ろうっていうんだから、虫が良すぎ。85分という短めの上映時間なのに、それが長く感じられてしまう。

電話も車も壊されてしまったため、納屋にある無線機で外部と連絡を取ろうとするのは納得だが、別行動をとる必要があるんだろうか。いくらなんでも進んで、餌食になりますよ、はないだろう。

巻頭、「実際の事件に基づく物語」という字幕に続いてもっともらしい解説があったが、未解決でほとんど何もわかっていない実際の事件、って、そりゃどうにでもできるよね。

で、映画のデッチ上げは、犯人たちは車で移動しているストレンジャーで、殺人もしくは人を恐怖に陥れるのが趣味の三人組の犯行、なんだって。はいはい。そして、主人公たちは見事彼らにやられてしまう。んー、怖い話じゃないですか。けど、出来た映画は怖いどころか退屈。

最後の付けたし場面も意味不明の、いいとこなし映画だ。

原題:The Strangers

2008年 85分 アメリカ シネスコサイズ 配給:プレシディオ PG-12 日本語字幕:川又勝利

監督・脚本:ブライアン・ベルティノ 製作:ダグ・デイヴィソン、ロイ・リー、ネイサン・カヘイン 製作総指揮:ケリー・コノップ、ジョー・ドレイク、ソニー・マリー、トレヴァー・メイシー、マーク・D・エヴァンズ 撮影:ピーター・ソーヴァ プロダクションデザイン:ジョン・D・クレッチマー 衣装デザイン:スーザン・カウフマン 編集:ケヴィン・グルタート 音楽:トムアンドアンディ 音楽監修:シーズン・ケント

出演:リヴ・タイラー(クリスティン・マッケイ)、スコット・スピードマン(ジェームズ・ホイト)、ジェマ・ウォード(ドールフェイス)、キップ・ウィークス(マン・イン・ザ・マスク)、ローラ・マーゴリス(ピンナップガール)、グレン・ハワートン(マイク)