楽天地シネマズ錦糸町-1 ★★★
■地球に優しく!?(何様のつもり)
どうかなと思う部分だらけなのだが、この手のSFものには目がないため、点数が大甘になっていることをまず断っておく。
なにしろ、胎盤のような宇宙服から複製された人間の体で異星人が現れるところや、たとえ造形が不満(というのとも違うのだが)であっても巨大ロボットが登場すると聞いてしまったら(むろん観るまで知らなかったことだが)もうそれだけでワクワクしてしまう体質なのである。
セントラルパークにやってきた球体宇宙船?には関心できない(こんなのごまかしだい!)が、スタニラフ・レムの『砂漠の惑星』を想わせる増殖型の小型昆虫ロボットにはアドレナリンが吹き出した(ただし予告扁にも使われていた、大増殖したこの昆虫ロボットが競技場を飲み込んでしまうシーンなどにも、細かい注文はつけたい気分ではある)。
とはいえ、話はとんでもなくお粗末。文明で数段優った異星人が、地球を守るために人類を抹殺するしかないというのは納得(反論出来ないもの)だけど、そのための調査に何年も前に先発隊を送り込んでおきながら、間際に異星人クラトゥ(DNAを採取して人間型となっている。でなくても表情の乏しいキアヌは宇宙人ぽいが)の判断でどうにでもなるというのだから。
地球人側(米国の対応に限られているのは映画の事情だがろうが、各国が連携してこの事態にあたれるかというと、現状では難しそうだものね)も大統領(何で最後まで出てこない!)の代理である国防長官が、あわよくば異星人をやっつけられるかも程度の認識で、交戦してしまうのだから恐ろしい。こういう行動に出そうなヤツっていそうだものね。
国防長官は異星人の圧倒的な力の前に、あっさり考えを改めるのだけれど、いくら仕方ないとはいえ、これはこれでなんだかな、なのである。
繰り返しになるが、地球を守るためには人類は不要というのはまさに正論だから、笑ってしまうしかないのだが、異星人の破壊行動だって、それが地域限定(かどうかは?)だとしても、生態系根こそぎの抹殺でしかなく、そのためにノアの箱船もどきの種の捕獲にいそしんでいたのだとしたら、異星人たちの脳味噌もお里が知れていて、技術=知性にあらず、になってしまう(って、これは映画人という人類が考えたのだった)。
そういや、すでに人類と何年も暮らしてきたという先発隊の調査員が、クラトゥに「俺は人間が好きなんだ」みたいなことを言っていたが、そんな発言を聞いてしまっては、この異星人たちの生きていく規範のようなものを訊ねてみたくなってしまうではないか(どう定義して映画を作ったのだろうか)。
異星人の目的が、旧作では核兵器の放棄(冷戦時代の終結)だったものを、地球温暖化問題に置き換えてしまうのだから、まったくもってハリウッドも商魂たくましい。最近このテーマのものが急増しているものね。まあ、それはいいことなんだけどさ。
大作B級映画だよね。私は十分楽しませてもらいました。
原題:The Day the Earth Stood Still
2008年 106分 ■サイズ アメリカ 配給:20世紀フォックス映画 日本語字幕:■
監督:スコット・デリクソン 製作:ポール・ハリス・ボードマン、グレゴリー・グッドマンアーウィン・ストフ 脚本:デヴィッド・スカルパ 撮影:デヴィッド・タッターサル 視覚効果スーパーバイザー:ジェフリー・A・オークン プロダクションデザイン:デヴィッド・ブリスビン 衣装デザイン:ティッシュ・モナハン 編集:ウェイン・ワーマン 音楽:タイラー・ベイツ
出演:キアヌ・リーヴス(クラトゥ)、ジェニファー・コネリー(ヘレン)、ジェイデン・スミス(ジェイコブ)、キャシー・ベイツ(国防長官)、ジョン・ハム、ジョン・クリーズ、カイル・チャンドラー、ロバート・ネッパー、ジェームズ・ホン、ジョン・ロスマン