銀座テアトルシネマ ★★☆
■実話が元にしては話が強引
パリ警視庁(原題はここの住所:オルフェーヴル河岸36番地)で次期長官と目されるレオ・ヴリンクス(ダニエル・オートゥイユ)とドニ・クラン(ジェラール・ドパルデュー)の2人の警視。昇進の決まったロベール・マンシーニ長官(アンドレ・デュソリエ)の気持ちは、上昇志向の強いクランではなく、仲間からの信頼が厚いヴリンクスにより傾いていた。
折しも多発していた現金輸送車強奪事件の指揮官に長官はヴリンクスを任命するが、ヴリンクスとは別にこの事件を追っていたクランは、ヴリンクスの下で動くしかないことを承知で、長官に捜査に加えてもらうよう直訴する。
シリアン(ロシュディ・ゼム)からヴリンクスが得た情報により犯人のアジトを取り囲んだ警官隊だったが、手柄を立てようとしたのかクランが突然単独行動に出(これは?だし彼自身が標的になりかねない危険なもの)、そのため激しい銃撃戦となる。定年間近だったヴリンクスの相棒エディ・ヴァランス(ダニエル・デュヴァル)が殉職し、犯人は部下のエヴ(カトリーヌ・マルシャル)を盾にして逃亡してしまう。
クランの行動は糾弾され、調査委員会にかけられる。一方ヴリンクスは犯人逮捕にこぎつけるが、シリアンの情報提供の際に彼の殺人を見逃した(これがシリアンの交換条件だった)ことをクランから調査部に密告され、共犯容疑で逮捕されてしまう。特別外泊中のシリアン(獄中の身)の、刑務所に送った相手への報復殺人があざやかすぎるのはともかく、そのそばにいたヴリンクスを目撃していた娼婦が出てきて(かなり?)、クランに情報提供(これも?かな)となると、都合がよすぎないだろうか。
クランは調査委員会で無罪になり2人の立場は逆転する。ヴリンクスとの面会も許されない妻のカミーユ(ヴァレリア・ゴリノ)はシリアンに呼び出されるが、家を盗聴していたクランらに追跡される。カミーユの密告を疑ったシリアンは無謀な逃走をし、車は横転してしまう。クランはかつて彼も愛していたはずのカミーユに銃弾を撃ち込む。
このクランの行動は謎ではないが、承認できない。少し前にカミーユから拒絶される場面はあるが、といってここまでするだろうか。状況からいっても必然性がないし自分が危なくなるだけだから、単純にクランの愛情が怨みに転化したと解釈していいのだろうが、話をつまらなくしてしまった(それにカミューユはすでに息絶えていたようにも見えた)。それともクランの人間性をより貶めるためのものだろうか。手錠のままカミーユの葬儀の場にいるヴリンクスに、クランはシリアンが彼女を撃ったとわざわざ告げているから、そうなのかもしれない。このセリフはヴリンクスにかえって疑念を抱かせるだろうから。
ヴリンクスは7年後に出所し、カミーユの死の真相を探り始め、パリ警視庁長官となっているクランに行き着く。
物語としてはこんなところだが、あらすじを書きながら?マークを付けていったように展開が少々強引(付け加えるなら、クランは調査委員会で無罪にはなったが、しかし長官にはなれないのでは)なのと、やはりクランのカミーユ殺害が納得できなかったことで、最後まで映画に入り込めなかった。肩入れしやすいヴリンクスにそって観ればいいのかもしれないが、ラストの決着の付け方もよくわからなかったから、それもできず。ま、私の趣味ではない作品ということになるのかも。
細かいことだが、最初にある警官による警視庁の看板強奪も何故挿入したのかが不明。まさかお茶目な警官像ということはないだろう。とすると、警官といったってやっているのはこんなものさ、とでも? あと、音楽が少しうるさすぎたのだけど。
【メモ】
ヴリンクス警視はBRI(探索出動班)所属、クラン警視はBRB(強盗鎮圧班)所属。
原題:36 Quai des Orfevres
2006年 110分 シネスコサイズ フランス 日本語字幕:■
監督:オリヴィエ・マルシャル 製作:フランク・ショロ、シリル・コルボー=ジュスタン、ジャン=バティスト・デュポン 製作総指揮:ユグー・ダルモワ 脚本:オリヴィエ・マルシャル、フランク・マンクーゾ、ジュリアン・ラプノー 共同脚本:ドミニク・ロワゾー 撮影:ドゥニ・ルーダン 編集:ユグー・ダルモワ 音楽:アクセル・ルノワール、エルワン・クルモルヴァン
出演:ダニエル・オートゥイユ(レオ・ヴリンクス)、ジェラール・ドパルデュー(ドニ・クラン)、アンドレ・デュソリエ(ロベール・マンシーニ)、ヴァレリア・ゴリノ(カミーユ・ヴリンクス)、ロシュディ・ゼム(ユゴー・シリアン)、ダニエル・デュヴァル(エディ・ヴァランス)、ミレーヌ・ドモンジョ(マヌー・ベルリネール)、フランシス・ルノー(ティティ)、カトリーヌ・マルシャル(エヴ)、ソレーヌ・ビアシュ(11歳のローラ)、オーロル・オートゥイユ(17歳のローラ)、オリヴィエ・マルシャル(クリスト)、アラン・フィグラルツ(フランシス・オルン)