M:i:III

2006年07月30日 日曜日

TOHOシネマズ錦糸町-8 ★★★☆

■感情剥き出し男対冷眼冷徹冷酷男

娯楽アクション超大作の名に恥じぬデキで、目一杯楽しめる。トム・クルーズが爆風で車に叩きつけられる場面など、予告篇でいやというほど観ているのに、流れの中で観てまた感心してしまったくらいだ。

スパイは卒業して教官となり、ジュリア(ミシェル・モナハン)との結婚も控えているイーサン・ハント(トム・クルーズ)だが、教え子リンジー(ケリー・ラッセル)の救出に乗り出したことで、とんでもない事件に巻き込まれていく。教え子の死。黒幕デイヴィアン(フィリップ・シーモア・ホフマン)の捕獲に、彼の逃亡。その瞬間、魔の手はジュリアに伸びる。彼女が捕らえられたことで、ハントには「ラビットフット」という謎の兵器を取り戻すという新たなミッション(脅迫)が与えられることになってしまう。

ハラハラドキドキのまま突っ走るが、さすがに最後の方では息切れしたのか、あれっという感じの終わり方に。で、冷静になって考えるとやはりアラが見えてくる。十分楽しんでおいてアラ探しちゅーのもなんだけど。

まずどうしても気になってしまうのが、一番の大仕掛けである橋の上の場面。デイヴィアンの救出に、小型ジェットやヘリがロケット弾で攻撃してくるのはさすが国際的な武器商人と思わせるが、しかし米国内でこんなことが可能なのか。

ここまで派手に暴れて米軍がこれを見落としたのなら、それは裏(それも相当上層部とのつながりでないと)があるってことになるし、それを考えないハントも能なしになってしまう。でもこれでIMFの組織内の裏切りがわかってしまうのでは、それもへんてこだ。そのために組織内裏切り(これも最近では鼻に付いてきたものな)にはもうひとひねりが用意されているのだろうけどね。でもやっぱりこれとは関係ないよね。

次はお得意のマスクのトリックで、今回はマスク製造器まで登場させているのは楽しくていいのだが、このトリックをデイヴィアンがハントを痛めつけるのに使う(冒頭の場面)っていうのはどうなんだろう。IMFだけでなく悪役までがこれを自在に使えるのでは、もうどんな話でも作れそうだ。それに付け加えるならば、デイヴィアンがハントの結婚相手のジュリアに身代わりを立てる必要はなにもないはずだ。

そのジュリアだが、はじめて銃を持たされてあの活躍はねぇ。ハントが頭に埋め込まれた爆弾の回路を電気ショックで切り、ショック死した彼を蘇生させるという荒技までやってのける(彼女は看護士なんでした)。まあ、大甘でこれも見逃して、でも最後にIMFの本部で組織の連中と彼女が打ちとけているというのは? 「スパイ大作戦」はあくまで謎の組織が、その指令テープまで一々消去していたと記憶していましたが。こんなにオープンな組織だったとは。だったらいっそジュリアも仲間だったというオチにすれば……ってそれじゃああんまりか。

最初に最後があれれと書いたのは、この他にハントが仲間と別れ、武器も携帯1つになっていくのに合わせるかのように(でも最後までチームプレーは強調されていた)、デイヴィアン側も人数が手薄になっていくことで、自分の救出劇にあれだけの物量をぶつけてきたデイヴィアンとはとても思えないのだな。

ベルリン、ヴァチカン、ヴァージニアと快調に飛ばしてきて、上海篇は少しふざけすぎなのよ。ビルに野球のピッチングマシーンでボールを投げるのも、ハントの走りも。この走りは正当派故にその挙動がかえっておかしいのだ(ジャンプもオリンピック選手のようだった)。あと、これははじめの方のパーティ場面に戻るが、ハントが唇を読んじゃって。ありゃ、怖いよ。会話への割り込みも含めて、あんなことしてるようじゃ結婚解消と思うが。で(また最後に)、最後に愛は勝つじゃあ、って笑っちゃ悪いか。

この『M:i:III』では、ハントが特に感情剥き出しでスパイらしくないのが見物(そこが欠点でもあり面白さでもあるのだが)。何しろミッションはリンジーやジュリアがらみで、つまりなにより彼自身のミッションに他ならない。だからその延長線上で、デイヴィアンに対する怒りが爆発し、飛行機の中での度を超した脅かしとなる。が、デイヴィアンはまったく動ぜず、逆にハントの運命を予言する。

このデイヴィアンの造形もなかなかだが、裏切り上司マスグレーブ(ビリー・クラダップ)の言い分がふるっていた。彼も国益と民主主義のために働いているらしいのだ。武器商人を泳がせることでテロ国家を攻撃する口実を作ると言うのだけど、屁理屈もここまでくると……って案外現実に近いか。米国が今やっていることだものね。

ところでこの映画で私が一番心を惹かれたのは、ハントとリンジーの関係だ。リンジーがハントにお礼をいう映像には胸が熱くなった。けれど、ああいう場面を見ると同僚のヴィング・レイムス(ルーサー)ではないが、「寝たのか?」と聞きたくなってしまう。ハントの答えは「彼女は妹のようだった」というもの。いや、そうでしょうとも。だってジュリアと結婚しようとしているんだから。でもね。教え子は女性でなくてもよかったような?  でないと私のような下品な人間は、あらぬことを考えてしまいますがな。

 

【メモ】

「ラビットフット」とは一体何? 正体を明かさなくても十分物語は成り立つし、そういう演出もありなんだが。でも例えば生物兵器よ、と言われたら……あ、そう、で終わりか。

これも演出方法の問題だが、上海のビルに潜入したと思ったらハントは「ラビットフット」をもう手にしていた。侵入が今までは見せ場だったのにね。

ローレンス・フィッシュバーンは、最初の疑惑の上司ブラッセル役。堂々としていてさすがだ。

原題: Mission: Impossible III

2006年 126分 アメリカ 日本語字幕:戸田奈津子

監督:J・J・エイブラムス、脚本:J・J・エイブラムス、アレックス・カーツマン、ロベルト・オーチー、原作:ブルース・ゲラー、撮影:ダニエル・ミンデル、音楽:マイケル・ジアッキノ、テーマ音楽:ラロ・シフリン

出演:トム・クルーズ(イーサン・ハント)、フィリップ・シーモア・ホフマン(オーウェン・デイヴィアン)、ミシェル・モナハン(ジュリア)、ケリー・ラッセル(リンジー)、ヴィング・レイムス(ルーサー)、ローレンス・フィッシュバーン(ブラッセル)、サイモン・ペッグ(ベンジー)、ビリー・クラダップ(マスグレーブ)、マギー・Q(ゼーン)、ジョナサン・リス=マイヤーズ(デクラン)

日本沈没

2006年07月30日 日曜日

2006/7/30 TOHOシネマズ錦糸町-3 ★★☆

■日本半分沈没

なにしろ日本沈没である。日本が沈没するとなると1億2千万の全日本人(外人もいるけど、おおまかね)に、否が応でも劇的なドラマが訪れるわけである。つまりこの映画の登場人物は、選ばれし人物ということになる。

であるのに映画はいきなり、ハイパーレスキュー隊員である阿部玲子(柴咲コウ)によるアクロバチックな、少女(倉木美咲=福田麻由子)救出劇を用意する。女性隊員という設定もだが、あとの場面で彼女は長髪をなびかせたりするのだ。

のっけから細かいことに難癖を付けて申し訳ないが、なにしろ日本が沈没してしまうのだから、やはりここは相当マジで行きたいと思うのだ。

彼女と潜水艇のパイロットである小野寺俊夫(草彅剛)の恋愛話を、日本政府の対応に対極させる形にしたのは決して間違いではないし、「自分だけが幸せにはなれない」という彼女に突き動かされるように、最後は彼にも「俺にも守りたい人がいます」「奇跡を起こせます。起こしてみせます」とまで言わせるというのは悪くはない。

が、骨組みはよくても肉付け部分に難がある。神出鬼没の小野寺というご都合主義にはまだ目をつぶれるが、最初に書いた玲子の造型などが話を台無しにしている。ふたりのラブシーンでの妙な引き延ばしは『LIMIT OF LOVE 海猿』に比べれば、ずっと抑えてはあるのだが……。

次は、これはどうしてもはずせない田所博士(豊川悦司)だが、日本沈没の兆候発見者であるにもかかわらず、アメリカのすっぱ抜き?があってか、最初から迷走気味。これでは型破りな科学者というよりは、冷静さを欠いた行動ばかりが目立つただのマッドサイエンティストではないか。

政府の対応は、これまたあまりに心もとない。いい加減な連中を適当に配したのはわかるが、しかし山本首相(石坂浩二)は、髪型からしても小泉首相を意識しているのだろう。だからだね、中国訪問を前に、「どれだけ(日本人を)受け入れてもらえるか」と鷹森文部科学大臣(大地真央)に悩みをうち明けるのは。交渉難航は必然だものなー。

山本首相は続けて、未曾有の国難を前に「何もせず、愛する者と一緒に滅んだ方がいい」という特殊な意見が違う分野から出ていることについて、「こういう考え方が日本人なのかも」しれず、自分の考えもこれに近いと語る。しかし、この考え方のどこが日本人的なのだろう。本気でこのセリフを喋らせているなら問題ではないか。日本人は果たして特殊な民族だろうか。そう思い込みたいだけじゃないのか。

山本首相の死後(訪問に出かけた首相専用機が阿蘇山の噴火に巻き込まれるというお粗末な設定)、危機管理担当大臣にも任命されていた鷹森大臣が、元夫でもある田所博士の助言(これも訊くのが遅いんだよね)により、世界中の掘削船を導入して、プレート内部に爆薬を仕掛けるという最後の賭けに出るのだが、他の奴らは何をしているんだ! まあ、映画だから仕方ないのだけどね。

このあとの話の盛り上げ方も低レベル。各国の掘削船で何カ所にも爆薬を仕掛けながら、最終的には強力な爆薬を深海潜水艇から直接操らなければならないなんて。しかも最新の潜水艇は結城(及川光博)もろとも失われ、小野寺は博物館に展示されているすでにお払い箱となった旧式の潜水艇に乗り込むことになるのだ。掘削船だけじゃなく、潜水艇も借りろよ。

爆薬(N2爆弾の起爆装置?)すら予備がなくて、結城が落としてしまったものを拾うって! 日本が沈没しつつあるっていうのに、プレートのそばに落としたものが見つけられるわけがないでしょ! 小野寺の「特攻」を演出したかったのかもしれないが、あまりにひどい。そもそもアイディアは『アルマゲドン』だしね。

というわけで、日本はなんとか沈没をまぬがれるのでした。ずたずたに分断された島だらけの国となって残るのね。ありゃりゃ、ということは日本人がユダヤ人のような放浪の民族になったらどうなるか、という原作の壮大な意図はどこへ行ってしまったのだろう。

特撮はなかなかだし、なにしろ日本(半分)沈没なわけだから、どんな話をもってきても考えさせられることが多いわけで、それだけでも意味があると思うのだが、逆に自分に引きつけた物語を見つけようとすると、どうしても点は辛くなってしまうだろう。

こうなったら、毎年『日本沈没』の別バージョンを創り続けるか、もしくはマクロ的な、それこそ特撮に特化し個人の感情など徹底的に排除した、つまり蟻のような人間しか出てこない『日本沈没』というのは、いかがでしょう。観たいな、これ。いや、ホント。

 

【メモ】

旧作の『日本沈没』は東宝の製作と配給で、1973年12月29日に正月映画として公開された。小松左京の原作も1973年、光文社のカッパノベルスから上下2巻の同時刊行。

玲子が倉木美咲を救出する方法もどうかと思うが、美咲を引き取るのもおかしい。玲子は骨折で仕事を休むが?

「沈没することが明らかになった以上、唯一の救いは数10年後に起きることが今予測できたことだ」と、最初のうちはまだ余裕もあったのだが……。

「こうなってしまった以上何が大切ですか」「私は心だと思う」

デラミネーション。

鷹森大臣と田所博士は20年前に離婚。

仏像の運び出し場面。賄賂代わりに、国宝を手みやげ。

「命よりも大事な場合もあるの。人を好きだって気持ちは」小野寺俊夫に彼の母が言う。

「日本はアメリカに見捨てられた」というセリフは、アメリカを信用していない者にとっても唐突だ。これだけの大異変となると近隣諸国に及ぼす影響も大きいわけで、すべてのことが日本政府の決断と平行して国連がらみで進行していくのではないだろうか。

避難民が山の方へ向かうのはわかるが、富士山に向かって行く?

最新の潜水艇は「わだつみ6500」。展示品になっていたのは「わだつみ2000」。

最後の爆発時に、海上にはまだ船(掘削船だよね)が多数いたようだが?

2006年 135分 配給:東宝 

監督:樋口真嗣 脚本:加藤正人 原作:小松左京 撮影監督:河津太郎 編集:奥田浩史 音楽:岩代太郎 特技統括/監督補:尾上克郎 特技監督:神谷誠 撮影協力:防衛庁、東京消防庁、JAMSTEC(独立行政法人 海洋開発研究機構)

出演:草彅剛 (小野寺俊夫 潜水艇パイロット)、柴咲コウ(阿部玲子 ハイパーレスキュー隊員)、及川光博(結城慎司 潜水艇パイロット)、石坂浩二(山本尚之 内閣総理大臣)、豊川悦司(田所雄介 地球生命学博士)、大地真央(鷹森沙織 文部科学兼危機管理担当大臣)、福田麻由子(倉木美咲)、吉田日出子(田野倉珠江 玲子の叔母)、國村隼(野崎亨介 内閣官房長官)、長山藍子(小野寺俊夫の母)、和久井映見(小野寺俊夫の姉)、六平直政、ピエール瀧、柄本明、福井晴敏、庵野秀明