007 カジノ・ロワイヤル

2006年12月3日 日曜日

新宿ミラノ1 ★★★☆

■生身だから、恋もすれば、死にかけたりもする

ダニエル・クレイグのイメージが、今までのボンドとあまりにかけ離れているので、どうしてもそこに目がいってしまうが、映画自体も、まさに一新という内容になっている。好都合なことに、フレミングの原作がパロディ映画にはなったものの1つだけ残っていて、どこまでが原作に忠実かは別として(意味ないものね)、宣伝も「ジェームズ・ボンドが007になるまでの物語」(正確にはそれは少しで、最初の任務が軸。00要員になる最後の昇格条件は2つの殺害)と、新シリーズ誕生を鮮やかに印象づけている。

手始めはマダガスカルの工事現場での爆弾犯追跡劇。この追いかけっこがなかなかで、しかも相手(セバスチャン・フォーカン)の逃げ方のほうが格好いいときてる。ボンドはなんとか頭を使ってカバーするのだが、物は壊すし、自分の体は思いっ切りぶつけるし、と何とも荒削りだ。今までのボンドだと、スーツを着たままそれこそ汗ひとつかかずにやり遂げてしまうイメージが定着しているが、こちらは生身が売り物(筋肉見せまくり)のようだ。でありながら、もちろん超人的なんだけど。

悪役は、ル・シッフル(マッツ・ミケルセン)という投資家で、世界中のテロリストの活動資金を支えている張本人が彼という設定だ。マネーロンダリングはもちろん、テロで空売りを仕掛けた株価を暴落させようとする。ボンドのマイアミ空港での活躍で、その目論見(航空機の爆破)が阻止されると、損失を取り戻すべくモンテネグロのカジノ・ロワイヤルで大勝負に出ようとする。

ちょっと安直な筋立てだが、ル・シッフルもさすがに追いつめられたってことか。ここでアクションは休憩となって、情報を掴んだボンドもそこに乗り込み、カジノ対決となる。安直なのは英国諜報機関(MI6)もだよね。ギャンブルでテロ資金を巻き上げてしまおうって? しかもその席にはCIA(ジェフリー・ライト)もいて、こいつはポーカーが下手だってんだから笑ってしまう。でもまあ、この場面は時間をきっちりとっているだけの駆け引きが楽しめる。

ボンドは、つまり国家予算を賭金にしているわけで(おいおい)、英国財務省からはお目付役としてヴェスパー・リンド(エヴァ・グリーン)が同行する。彼女がボンドの恋の相手で、ボンドは愛に生きる決心をし、なんとMI6に辞表まで提出する。彼女との絡みでは、初めて殺しの場面を目にし、ショックで着衣のままシャワー室に座り込んでしまっている彼女に、ボンドが寄り添うようにして慰める場面も用意されていて、007映画らしからぬ繊細な配慮も見せる。もっとも、私的には恋の部分でのときめきには至らず、逆に減点対象にしてしまったのだけど。

カジノでもル・シッフルに勝つボンドだが(取られちゃったらどうするつもりだったのだ)、ヴェスパーを誘拐され、自身もル・シッフルの手に落ちてしまい、ここで全裸拷問場面となる。が、そのル・シッフルもテロ組織に消されて、と話は急展開。さらにはヴェスパーへの疑惑に、彼女の死、組織内の裏切り、と続くのだが、涙腺異常で目から血を流すル・シッフルがいなくなってしまってからは、アクションも含めて意外と盛り上がらない。頑張ってヴェネチアで古い建物を倒壊させているが、これも外している。

ということで、恋とはおさらばし、めでたくボンド誕生となる。で、最後になっていつもの決めゼリフの「My name is Bond, James Bond.」がやっと飛び出すという趣向だ。

クレイグボンドは新鮮だが、感情むき出し路線だと『M:i:III』があった。そういえば、トム・クルーズが蘇生したように、毒を盛られたボンドがAED(自動体外式除細動器)を使って危機を脱するあたりも似ていなくもない。もっともアイディア兵器の使用はぐっと少なく、アストン・マーチンから出てきたのはこのAEDくらいで、だからQも登場しない。子供だましという感じはないが、これはこれでさみしかったりする。

M(ジュディ・デンチ)との信頼が次第に築かれていくところなどもあるが、今回観るかぎりでは、逆にボンドである必要があったのか、とも。まあ、そう言いつつこんなことをだらだらと書けるのも、007のブランド力があってこそなのだが。

 

【メモ】

ニューボンドは6代目。シリーズとしては21作目。

冒頭の追いかけっこで得たケータイ情報から、ボンドは大胆にもMの自宅に侵入し、Mのパソコンを使って単独捜査までやらかす。

原題:Casino Royale

2006年 144分 スコープサイズ アメリカ、イギリス 日本語字幕:■

監督:マーティン・キャンベル 原作:イアン・フレミング『007 カジノ・ロワイヤル』  脚本:ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、ポール・ハギス 撮影:フィル・メヒュー プロダクションデザイン:ピーター・ラモント 衣装デザイン:リンディ・ヘミング 編集:スチュアート・ベアード 音楽:デヴィッド・アーノルド テーマ曲:モンティ・ノーマン(ジェームズ・ボンドのテーマ)  主題歌:クリス・コーネル
 
出演:ダニエル・クレイグ(ジェームズ・ボンド)、エヴァ・グリーン(ヴェスパー・リンド)、マッツ・ミケルセン(ル・シッフル)、ジュディ・デンチ(M)、ジェフリー・ライト (フェリックス・レイター)、ジャンカルロ・ジャンニーニ(マティス)、サイモン・アブカリアン(アレックス・ディミトリオス)、カテリーナ・ムリーノ(ソランジュ)、イワナ・ミルセヴィッチ(ヴァレンカ)、セバスチャン・フォーカン(モロカ)、イェスパー・クリステンセン(ミスター・ホワイト )、クラウディオ・サンタマリア、イザック・ド・バンコレ

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