カサノバ

銀座テアトルシネマ ★★☆

■カサノバ最後で本気の恋。にしてはどこか軽い作り

稀代のプレイボーイ、あるいは女たらしのカサノバ(肩書きは他に多数というが、この作品もこれ)を題材に、彼の最後の本気の恋を描く。

ジャコモ・カサノバ(ヒース・レジャー)は修道女に手を出したことで捕まってしまうが、総督のお情けで無罪放免となる。ただし教皇庁のマークもあって、両家の子女との結婚が条件だ。

さっそく従者のルポ・サルヴァト(オミッド・ジャリリ)を従えてヴィクトリア・ドナート(ナタリー・ドーマー)に結婚を申し込むが、彼女に片思いの青年ジョバンニ・ブルーニ(チャーリー・コックス)と決闘騒ぎになる。が、決闘相手は実は腕の立つジョバンニの姉フランチェスカ・ブルーニ(シエナ・ミラー)が身代わりで、カサノバは当人と知らずカサノバ批判をする彼女に恋してしまう(よくあることさ)。

そのフランチェスカにも母親アンドレア・ブルーニ(レナ・オリン)が財産目当てで決めた結婚相手ピエトロ・パプリッツィオ(オリヴァー・プラット)がいて、そいつがちょうどヴェネチアへやってくるから大変だ。

加えて、フランチェスカが女性心理を説いて当代人気の覆面作家ベルナルド・グアルディその人だったり(「女性は気球のように、男と家事と言う重い砂袋さえなくなれば、自由に空を飛べるのだ」)、ローマから送り込まれた審問官のプッチ司教(ジェレミー・アイアンズ)とフランチェスカの目をごまかすためにカサノバがパプリッツィオになりすましたりと、話はややこしくなるばかり。

この難問を、最後にはカサノバとフランチェスカ、ジョバンニとヴィクトリア、パプリッツィオにはアンドレアという組み合わせの誕生で解決してしまう。これだけの大騒ぎをまとめてしまう脚本はよく練られているとは思うが、フランチェスカの2度の男装シーンだけでなくパプリッツィオのエステまで、すべてがおちゃらけてしまっているから気球のように軽い。

カサノバは好き勝手にやっているだけでヴェネチアの自由の象徴という感じはしないし、プッチ司教も馬鹿にされて当然のような描き方。いくらコメディとはいってもねー。パプリッツィオなど怒ってしかるべきなのに、フランチェスカの母親をあてがわれて(失礼)喜色満面(いや、もちろん相性はあるでしょうが)でいいのかって……。

女たらしはこれで打ち止めにし(なにしろ「生涯ただ一人の男性だけを愛する」フランチェスカが相手なのだ)、女遊びに目覚めたジョバンニにカサノバ役は譲ったという珍説での締めくくり。だからヴィクトリアも尻軽女のように描かれていたのか。可哀想な登場人物が多いのよね。

 

【メモ】

ジャコモ・カサノバ(1725-1798)。自伝『我が生涯の物語』。

プッチ司教「ヴェネチアの自由もバチカンの風向き次第だぞ」

原題:Casanova

2005年 112分 アメリカ サイズ■ 日本語版字幕:古田由紀子

監督:ラッセ・ハルストレム 製作:ベッツィ・ビアーズ、マーク・ゴードン、レスリー・ホールラン 製作総指揮:スー・アームストロング、ゲイリー・レヴィンソン、アダム・メリムズ 原案:キンバリー・シミ、マイケル・クリストファー 脚本:ジェフリー・ハッチャー、キンバリー・シミ 撮影:オリヴァー・ステイプルトン プロダクションデザイン:デヴィッド・グロップマン 衣装デザイン:ジェニー・ビーヴァン 編集:アンドリュー・モンドシェイン 音楽:アレクサンドル・デプラ
 
出演:ヒース・レジャー(ジャコモ・カサノバ)、シエナ・ミラー(フランチェスカ・ブルーニ)、ジェレミー・アイアンズ(プッチ司教)、オリヴァー・プラット(ピエトロ・パプリッツィオ)、レナ・オリン(アンドレア・ブルーニ)、オミッド・ジャリリ(ルポ・サルヴァト)、チャーリー・コックス(ジョバンニ・ブルーニ)、ナタリー・ドーマー(ヴィクトリア・ドナート)、スティーヴン・グリーフ、ケン・ストット、ヘレン・マックロリー、リー・ローソン、ティム・マキナニー、フィル・デイヴィス

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