ワールド・トレード・センター

2006年10月14日 土曜日

楽天地シネマズ錦糸町-4 ★★

■救助する側からされる側になってしまったふたり

9.11米国同時多発テロで崩れ去った世界貿易センタービル(WTC)。その瓦礫の中から生還した2人の港湾警察官の実話の映画化。

2001年9月11日3:29。ジョン・マクローリン巡査部長(ニコラス・ケイジ)は多分いつものように起きてシャワーをし、家族を確認して職場へと出かける。ありふれた業務の中で「ドン」という異様な音が響く。旅客機の大きな影がビルを横切る映像が直前にあって、それだけで息苦しくなる。WTCの北棟に旅客機が激突するという大惨事の報告を受けて、マクローリンを班長とした救助チームが結成され、現場へ急行する。

救助とはいえ、現場にいる人間にすらも状況がわからない有様で、全員がビルを見上げるばかり。あまりの惨状に、ビル内に入ることを志願したのは新米警官のウィル・ヒメノ(マイケル・ペーニャ)を含む3人だけで、マクローリンは彼らを引き連れ酸素ボンベを取りに行くが、搬送中にビルは崩壊をはじめる。当人たちはビルが崩壊しているとは思ってもいないわけで、救助されたあとに「ここのビルは」と瓦礫の山を見て尋ねる場面がある。

3秒ほど真っ黒になったあと、画面は少しずつ明るくなり、アップになったマクローリンの目が動く。マクローリンとヒメノのふたりは、ビルに乗り込んでほとんど何もしないうちに動けなくなってしまったのだ。他にペズーロが奇跡的に埋まらず元気にいたのだが、次の崩落が彼を襲い、悲嘆にくれた彼は自殺してしまう。

ふたりは、なにしろ体を少しも動かすことが出来ないときているから、お間抜けなことに痛みに耐えながら眠らないように互いを励まし合うことしかできない。しかし、これが逆に実話ということを実感させてくれる。救助する側からされる側になってしまったふたりは、およそヒーローらしからぬヒーローとして記憶されることになるだろう。

ドラマ部分が希薄だから、ふたりの家族(とくに妻)の話をもってきたのは当然としても、これまた劇映画としてみてしまうのはいささか具合が悪いような。まあ、そんなことをとやかく言うのは気が引けるのだけど。そして私などは、映画としてこんなにもプライベートなことを公開してしまっていいのだろうか(向こうではふたりはどんな扱いなのかしらね)などと、関係ないことばかり考えてしまったというわけだ。

この挿話で気になったのはマクローリンの息子が、母親(マリア・ベロ)が現場に向かおうともしないことに苛立って「ママは平気なの」と彼女をなじる場面。これはつらいだろうな、と。

ともかくオリバー・ストーンで9.11だからもっと激しい主張があるのかと思っていたが、政治的な意図は極力排除されていて、でも逆に、せっかく9.11をテーマにしたことの意味が薄くなってしまったという不満が残る。

むろん、それらしきところはあって、ブッシュがこの国は戦争に突入したという映像を入れた意味や、何かに突き動かされるように救助をし続けた元海兵隊員(マイケル・シャノン)……。彼は最後に「志願してイラクで戦った」と字幕があって、それは事実を述べたにすぎないのだろうが。

では、瓦礫の中で見たイエスはどうだろう。人は見たいものを見るというのが、私のそっけない意見だが、言葉でなくイエスを映像化したとなると、9.11の宗教戦争という側面を都合よく解釈しているような気がしてしまうのだが、それは杞憂だろうか。

 

【メモ】

瓦礫の中での会話に『G.I.ジェーン』(1997)が出てくる。デミ・ムーアが「痛みは友達。生きてる証拠」だと言うのだと。

救助されて、口から土砂を吸い取る場面がリアルだ。

映画は2年後の「マクローリンとヒメノ感謝の集い」の場面も描かれる。身重だったヒメノの妻から生まれた子供が駆け寄ってきてヒメノが抱き上げる。

ビルの崩落で亡くなった人は3000名近く(2749名?)で、国籍は87におよんだ。救助されたのは20人でマクローリンとヒメノは18、19番目だった(というような字幕が出る)。

原題:World Trade Center

2006年 129分 ビスタ アメリカ 日本語字幕:■

監督:オリバー・ストーン 脚本:アンドレア・バーロフ 原案:ジョン&ドナ・マクローリン、ウィル&アリソン・ヒメノ 撮影:シーマス・マッガーヴェイ 編集:デヴィッド・ブレナー、ジュリー・モンロー 音楽:クレイグ・アームストロング
 
出演:ニコラス・ケイジ(ジョン・マクローリン)、マイケル・ペーニャ(ウィル・ヒメノ)、マリア・ベロ(ドナ・マクローリン)、マギー・ギレンホール(アリソン・ヒメノ)、ジェイ・ヘルナンデス(ドミニク・ペズーロ)、スティーヴン・ドーフ(スコット・ストラウス)、マイケル・シャノン(デイブ・カーンズ)、アルマンド・リスコ(アントニオ・ロドリゲス)、ニック・ダミチ、ダニー・ヌッチ、フランク・ホエーリー

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