靴に恋する人魚

2006/9/23 新宿武蔵野館2 ★★

■可愛らしくまとめただけではね

「昔々、ドドという女の子がいました。みんなに愛される女の子でした」というナレーションではじまるおとぎ話、なのかな。カラフルな色づかいの小物や街並みにはじまって、登場人物や設定までもが絵本のような作りになっている。

生まれつき足が不自由だったドドは、『人魚姫』の絵本を読んでもらうと、自分も足が治ったら声を取られてしまうのではないかと心配でしかたがありませんでした。ところがある日、ドドは足の手術を受け、自由に歩けるようになります。大人になったドド(ビビアン・スー)は出版社に勤め、気難しいイラストレーターから作品をもらってくるのが仕事(電話番とかもね)。そしてなにより靴を買うことが好きな女性に成長したのでした。そんなドドは歯科医王子様のスマイリーと出会い結婚。新居でふたりはいつまでも幸せに暮らしましたとさ。

じゃなくって「このお話はここからが本当の始まりです」だと。といったっておとぎ話仕立ての作風が変わるわけではないが。ドドの靴を買う病気がエスカレートして、置き場所はなくなるし、靴が蛙に見えてきたスマイリーからは、とうとう靴を買わない努力をしてみたらと言われてしまう。ふたりで野鳥観察に出かけたりして気を紛らわしせていたドドだが、やっぱり我慢できなくなって……。

巻頭に出てきた「幸せとは、黒い羊と白い羊を手にいれること」という言葉は、単純にこのことだったのだろうか。靴を得ることでまた足を失い(マンホールに転落)、王子様を得たのに、その王子様は目のピントが合わなくなる病気になってしまう。

教訓めいた苦い話が、靴屋の前にいる女の子(マッチ売りの少女)に靴をあげることでほぼ解決してしまうのは、おとぎ話だからに他ならない。さすがに今度ばかりはドドの足は戻らないけどね。でもそのかわり、ドドには赤ちゃんが授かって、やっぱりめでたしめでたし。

馬鹿らしい話だが、最後まで可愛らしくまとめたのはお手柄。プレゼントの箱を受け取った人が中身を確かめるようと箱を振るギャグ(ケーキや子猫だったりする。これは何度も出てくる)や、画面処理もポップで楽しい。変人イラストレーターとの交流や靴屋(魔女なの?)の扱いなども考えてある。

でもやっぱり私にはちょっとつらかったなー。ビビアン・スー(もう31歳なのだと。それでこの役というのはある意味立派)やダンカン・チョウのファンならこれで十分なんだろうけどね。

【メモ】

プレゼントした人間がガクッとくるケーキ振りギャグには、4ヶ月の赤ちゃんの写真が入った箱を振る場面もあった。

英題:The Shoe Fairy

2005年 95分 台湾 サイズ■ 日本語字幕:牧野琴子

監督・脚本:ロビン・リー 撮影:チン・ディンチャン 音楽:ダニー・リャン

ナレーション:アンディ・ラウ 出演:ビビアン・スー[徐若迹пn(ドド)、ダンカン・チョウ[周群達](スマイリー)、タン・ナ(魔女)、チュウ・ユェシン (ジャック社長)、ラン・ウェンピン(ビッグ・キャット)

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