ある公爵夫人の生涯

2009年5月6日 水曜日

テアトルタイムズスクエア ★★☆

■世継ぎが出来りゃいいのか

いやはや、途中で何度もため息をついてしまったがな。だって、世継ぎを産む道具だった女の半生、でしょう。こういうのだって一種のトンデモ映画だよね。まあ、映画じゃなくて時代(十八世紀後半の英国)がそうだったのだろうけど。

多分スペンサー家に更なる名声が欲しかった母親の引導のもと、デヴォンジャー公爵に嫁がされたジョージアナだが、男の子(世継ぎ)さえ産んでくれればいいと思っている公爵の願いは叶えられず、産まれてきたのは二人とも女の子だった(男の子は二度流産してしまう)。

ジョージアナが嫁いだときにはすでに公爵には隠し子のシャーロット(家政婦の子のようだ)がいて、お腹の大きい時に「練習にもなるから」(うはは)と、その子の世話も押しつけられてしまう。けれど、シャーロットを我が子として可愛がっても、彼女や産まれてきた子供たち、そしてジョージアナに公爵が関心を寄せることはなかった。

「犬以外には無関心」とジョージアナは言っていたが、むろんそんなことはなく、あろうことか(じゃなくて家政婦に手当たり次第手をつけていたのと同じ感覚で)親友になったエリザベス・フォスターとも寝てしまう。映画だと公爵は政治にも興味がなさそうにしていたから、犬と女、だけらしい。

そして、ことが発覚しても三人の同居生活を崩そうとはしないのだ。ジョージアナとは性的に合わなかったのだろう。だから世継ぎが産まれても結局二人の関係は修復しない(注)。それならば(かどうか)と、自分もかつて心をときめかせたことのあるチャールズ・グレイ(ケンブリッジを出て議員になっていた)と密会し、こちらもエスカレートしていくのだから世話はない(物語としては、彼との間に娘ができたり、子供を取るか愛人を取るかのような話にもなる)。

よくわからないのは、私生児を世継ぎには出来ないと公爵が言っていることで、これは世間体とかではなく公爵自身がそう思っているようなのだ。妻の不倫も、もしや男の子でも宿ってしまったら、と思っての怒り爆発なのだろうか。好きとか嫌いではなく、血統がよければ、だから本当に女は子供を産む道具と考えていたのだろうが(ということはやはり当時の常識=世間体なのか)、映画がジョージアナ目線で描かれているため、公爵の真意は現代人には謎である(当時の人には、ジョージアナの考え方の方が謎だったかも)。

とにかく呆れるような話ばかりなのだが、私も人の子、スキャンダルには耳を欹ててしまうのだな(だからってジョージアナがダイアナ妃の直系の祖先みたいな売りは関心しないし、それには興味もないが。そして映画でもそんなことには触れていない)。で、まあ退屈することはなかったのだけど。

当時の公爵は、その夫人も含めて、庶民にとっては現在のスター並なのが興味深い。ジョージアナは社交的で、政治の場にも顔を出す(利用されたという面もありそうだ)し、ふるまいやファッションも取り沙汰される。たしかにあんな広大な邸宅に住んでいたら、情報や娯楽が少ない時代だから、それだけでスターになってしまうのだろう。母親がジョージアナより公爵の意見を優先するのもむべなるかな、なのだった。

ところでジョージアナの相手のグレイは彼女の幼なじみみたいなものなのだが、最後の説明で、後に首相になったそうな。うーむ。むろんスキャンダラスな部分と政治的手腕とは別物だし、とやかく言うようなことではないんだが……。

注:男の子は、公爵のレイプまがいの行為の末に授かる。産まれると小切手がジョージアナに渡されるのには驚くが、これを見ても本当に結婚は単に男子を産むという契約にすぎなかったんだ、と妙なところで感心してしまった。

原題:The Duchess

2008年 110分 イギリス、フランス、イタリア シネスコサイズ 配給:パラマウント・ ピクチャーズ・ジャパン 日本語字幕:古田由紀子

監督:ソウル・ディブ 製作:ガブリエル・ターナ、マイケル・クーン 製作総指揮:フランソワ・イヴェルネル、キャメロン・マクラッケン、クリスティーン・ランガン、デヴィッド・M・トンプソン、キャロリン・マークス=ブラックウッド、アマンダ・フォアマン 原作:アマンダ・フォアマン『Gergiana:Duchess of Devonshire』 脚本:ソウル・ディブ、ジェフリー・ハッチャー、アナス・トーマス・イェンセン 撮影:ギュラ・パドス プロダクションデザイン:マイケル・カーリン 衣装デザイン:マイケル・オコナー 編集:マサヒロ・ヒラクボ 音楽:レイチェル・ポートマン

出演:キーラ・ナイトレイ(ジョージアナ)、レイフ・ファインズ(デヴォンジャー公爵)、ドミニク・クーパー(チャールズ・グレイ/野党ホイッグ党政治家、ジョージアナの恋人)、ヘイリー・アトウェル(レディ・エリザベス・フォスター/ジョージアナの親友、公爵の愛人)、シャーロット・ランプリング(レディ・スペンサー/ジョージアナの母)、サイモン・マクバーニー(チャールズ・ジェームズ・フォックス/野党ホイッグ党党首)、エイダン・マクアードル(リチャード・シェリダン)、ジョン・シュラプネル、アリスター・ペトリ、パトリック・ゴッドフリー、マイケル・メドウィン、ジャスティン・エドワーズ、リチャード・マッケーブ

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