レッドクリフ Part II 未来への最終決戦

2009年4月26日 日曜日

上野東急 ★★☆

■決戦の運命は女二人に託される

CGがどこでもドアになって以来、スペクタクル物には不感症気味になっているので、そのことについてはあえて書かない(つまらないと言っているのではないよ。そりゃ大したものなのだ。それにCGを否定するつもりはないし、どころか使い方によっては歓迎さえしているのだが)。

前篇で赤壁の戦いを前にして、次のおたのしみはこの後篇で、とはちゃっかりしたものだが、とはいえ、大方の人が知っている話を二部作にしたわけだから工夫は必要で、Part IIでは大決戦を女二人に託すこととなった。これには孔明の風読みの知恵もかすれ気味だ(まあね。だって気象学の知識はすごくても、偶然待ちには違いないんで)。

まず、孫権の妹尚香は、大胆にも敵地に乗り込んでいってスパイ活動をする。これが、男装もだけど体型まで誤魔化してだから(体に敵の戦力配置をしたためた紙を巻いて太っちょになっている)もうマンガでしかない。けれど尚香と蹴鞠(といってもサッカーに近いものになっていた)がうまくて千人部隊の隊長に抜擢された孫叔材との恋は微笑ましかった。もっとも孫叔材の方は尚香をデブ助と呼んでいるくらいで、女とは思っていないから彼にとっては友情なのだが。

もう一人は、周瑜の妻の小喬。そもそも曹操は彼女を狙ってこの戦いを挑んできたという噂があるくらいだった。この時代にそんな噂が遠くまで飛び交うとは思えないが、けれど、噂というのはあなどれないからねぇ。で、小喬はこれまた単身で(お腹の子は勘定に入れなければね)、こちらは正面から曹操の元へと出向いて行く。

曹操の機嫌を取りにね。そして、それは夫を想うが故ながら、しかし考えようによっては思い上がりもはなはだしい。じゃないか、ちゃんと「夫の為でなく民の為に来た」と曹操に向かって正義を説いてはいたが、でもそれだって、私には思い上がりにみえてしまったのだった。小喬が曹操を評して「お茶を解さない方」と言ったのが、引っかかっているからなんだけど。映画だと口に出さないといけないからにしても、こういうのは言ってしまうとなぁ。

結局、小喬がお茶の相手をしたことが、風向きが変わるまでの時間稼ぎとなる。これが呉蜀連合軍が、数で圧倒する魏軍を火攻めで打ち負かす要因になるのだが、小喬はそこまで知っていたのだろうか。ま、それはともかく、結果、小喬大活躍の巻なのだった。尚香のスパイ活動共々、どこまで三国志に書かれているのかはよく知らないのだが、もう少し控え目でよかったのではないか。

女二人に活躍の場を与えてしまったので、その皺寄せは呉蜀連合の男共にきてしまう。ヒーローたりうる頭数はいるのに、話が分散気味なのだ。周瑜が一応中心なのはわかるが、小喬のことで足を引っぱられているような気がしなくもない。もしや、小喬はすすんで曹操の元に行ったとか、って、そういう話にはなりっこないのだが、個人的に小喬があまり好ましく思えなかったものだから、ついそのことを気にしてしまっていたようだ。

曹操はやることが冷酷だし、なにしろ兵隊は沢山いるし(注)、判官贔屓で悪役になるしかないのだが、部下の志気を高める心遣いなど天性のものがあったのか、呉に勝ったら税は三年免除、などと太っ腹なことを言っていた。が、曹操自ら疫病が蔓延しているところに行って、病気の兵士に粥を食べさせたり家族の話を聞かせたりはやりすぎで、話が途端に嘘臭くなる。

判官贔屓で悪役と書いたが、最後になってくると一人で悪役を引き受けているようで、曹操が逆に気の毒に見えてくる。「たった一杯の茶で大義を失った。皇帝の命で来たのだぞ」と自嘲気味に言う場面では少なからず同情してしまう。彼なりの大義で天下を統一しようとしていただけなのに、と。

それにしても『未来への最終決戦』とは、ひどい副題を付けたもんだ。史実はともかく、映画だと「去れ! お前の地に戻るがよい」と曹操を解放してしまうんで(そりゃないよね)、未来への最終決戦だったのに、また争いの種を蒔いてるようなものなんだもの。

注:映画だと八十万対五万、二千隻対二百隻。どこまで本当かは知らないが、この数字が確かなら関ヶ原の戦いの五倍ほどの規模になる。以前なら眉唾に却下してしまったはずだが、故宮や万里の長城を実際に目にしてきた今は、あながちデッチ上げとは思えずにいる。

原題:RED CLIFF: PART II 赤壁

2009年 144分 アメリカ、中国、日本、台湾、韓国 シネスコサイズ 配給:東宝東和、エイベックス・エンタテインメント 翻訳:鈴木真理子 日本語字幕:戸田奈津子 日本語版監修:渡邉義浩

監督:ジョン・ウー[呉宇森] アクション監督:コリー・ユン 製作:テレンス・チャン[張家振]、ジョン・ウー 製作総指揮:ハン・サンピン[韓三平]、松浦勝人、ウー・ケボ[伍克波]、千葉龍平、デニス・ウー、ユ・ジョンフン、ジョン・ウー 脚本:ジョン・ウー、チャン・カン[陳汗]、コー・ジェン[郭筝]、シン・ハーユ[盛和煜] 撮影:リュイ・ユエ[呂楽]、チャン・リー[張黎] アクション監督:コリー・ユン[元奎]  編集:デビット・ウー、アンジー・ラム[林安児]、ヤン・ホンユー[楊紅雨] VFX監督:クレイグ・ヘイズ VFX:オーファネージ 美術・衣装デザイン:ティム・イップ[葉錦添] 音楽:岩代太郎 主題歌:アラン

出演:トニー・レオン[梁朝偉](周瑜)、金城武(孔明/諸葛亮)、チャン・フォンイー[張豊毅](曹操)、チャン・チェン[張震](孫権)、ヴィッキー・チャオ[趙薇](尚香/孫権の妹)、フー・ジュン[胡軍](趙雲)、中村獅童(甘興)、リン・チーリン[林志玲](小喬/周瑜の妻)、ユウ・ヨン[尤勇](劉備)、ホウ・ヨン[侯勇](魯粛)、トン・ダーウェイ[菴汨蛻ラ](孫叔材/曹操軍の兵士)、ソン・ジア[宋佳](驪姫/曹操の側室)、バーサンジャプ[巴森扎布](関羽)、ザン・ジンシェン[臧金生](張飛)、チャン・サン[張山](黄蓋)

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