感染列島

2009年2月7日 土曜日

109シネマズ木場シアター4 ★★☆

■欲張りウイルス感染映画

正体不明のウイルスが日本を襲うという、タイムリーかついくらでも面白くなりそうな題材(そういえば篠田節子に『夏の災厄』というすごい小説があった)を、あれもこれもと都合優先でいじくりまわしてはダメにしてしまった、欲張り困ったちゃん映画だろうか。

まず冒頭のフィリピンで発症した鳥インフルエンザが、何故そこでは拡散せず(ウイルスが飛散する映像まで映しておいてだよ)、3ヵ月後の日本で大流行となったのかがわかりにくい(これとは関係ないようなことも言っていたし?)。新型ではないのに正体不明という言い方も素人にはさっぱりだ(映画なのだからもう少し丁寧に説明してほしいものだ)。

正体不明だからこそ、謎めいた鈴木という研究者によって、ようやくそのウイルスが解明されるわけで(新型ではないのね? しつこいけどよくわからないんだもの)、でも治療法は、結局栄子の死を賭けた血清療法が効を奏すのだが彼女は死んでしまう、って正体と治療法は別物とはいえ、映画としての歯切れは悪いし、すでに何万人にも死者を出している状態なのだから、この方法はもっと早い時期に試していてもよさそうで、これでは、悲壮感+栄子の見せ場作り、と言われても仕方ないだろう。

救命救急医の松岡が誤診?で患者(真鍋麻美の夫)を死なせてしまうことからWHOから松岡の旧知の小林栄子がメディカルオフィサー(って何だ)としてやってくるあたりは、映画としての許容範囲でも、あっという間に蔓延したウイルスが、病院を混乱に陥れ、都市機能まで麻痺させてしまうのに、松岡は治療を放り出して、仁志という学者と一緒にウイルス探しで海外に、ってあんまりではないか。

戦場と化したはずの病院が、いつまでたっても整然としていたりもする。ノイローゼになる医師は出てきても憔悴しているようにはみえないし、後半になっても朝礼のようなことをしている余裕さえあるのだ。発症源の医師(真鍋麻美の父)の行動はあまりにも無自覚で(発症後またアボンという架空の国連未加入国へ帰っている。一般人ならともかく医師なのに!?)、それはともかく彼がウイルスを持ち込んだのなら、そもそも日本にだけで病気が広まったことだっておかしなことになってしまう。医師の松岡たちも本気で感染対策をしているようには見えないし、書き出すときりがなくなるほどだ。

思いつくまま疑問点を羅列したため、話があっちこっちになっているが、私の話がそうなってしまうのも、この映画がいかに欲張っているかということの証だろう。『感染列島』と題名で大風呂敷を広げてしまったからかしらね。確かに荒廃した銀座通りなどのCGがいくつか出てくるし、1000万人が感染し300万人が死亡などという字幕に、何故日本だけが、みたいなことまで叫ばれるのだが、結局はそれだけなのである。だったら視点は松岡に限定し、場所も医療現場だけにとどめておけばよかったのだ(ついでに言うならウイルスの正体だって不明のままだってよかった)。

そうであったなら、松岡と栄子の昔の恋ももう少し素直に観ることができたかもしれない。この場面は、そうけなしたものではないしね。とはいえ、付けたしとはいえ松岡が最後は無医村で働いている場面まであっては、結局ただの美男美女映画が作れればそれでよかったのかと納得するしかないのだが。

 

2008年 138分 ビスタサイズ 配給:東宝

監督:瀬々敬久 プロデューサー:平野隆 企画:下田淳行 脚本:瀬々敬久 撮影:斉藤幸一 美術:中川理仁 美術監督:金勝浩一 編集:川瀬功 音楽:安川午朗 主題歌:レミオロメン『夢の蕾』 VFXスーパーバイザー:立石勝 スクリプター:江口由紀子 ラインプロデューサー:及川義幸 共同プロデューサー:青木真樹、辻本珠子、武田吉孝 照明:豊見山明長 録音:井家眞紀夫 助監督:李相國

出演:妻夫木聡(松岡剛)、檀れい(小林栄子)、国仲涼子(三田多佳子/看護師)、田中裕二(三田英輔)、池脇千鶴(真鍋麻美)、佐藤浩市(安藤一馬)、藤竜也(仁志稔)、カンニング竹山(鈴木浩介)、光石研(神倉章介)、キムラ緑子(池畑実和)、嶋田久作(立花修治/真鍋麻美の父)、金田明夫(高山良三)、正名僕蔵(田村道草)、ダンテ・カーヴァー(クラウス・デビッド)、小松彩夏(柏村杏子)、三浦アキフミ(小森幹夫)、夏緒(神倉茜)、太賀(本橋研一)、宮川一朗太、馬渕英俚可(鈴木蘭子)、田山涼成、三浦浩一、武野功雄、仁藤優子、久ヶ沢徹、佐藤恒治、松本春姫、山中敦史、山中聡、山本東、吉川美代子、山中秀樹、下元史朗、諏訪太朗、梅田宏、山梨ハナ

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