キサラギ

新宿武蔵野館3 ★★★★

■5人が集まったのにはそれなりのわけがあった

自殺した2流アイドル如月ミキの1周忌に、ネットで知り合った家元(小栗旬)、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)、いちご娘(香川照之)、スネーク(小出恵介)、安男(塚地武雅)という5人のオタクがオフ会で集まるというぞっとしない内容に、あまり気が乗らずにいたのだが(この映画の面白さは予告篇では伝えにくいかも)、観てびっくり。完全に作者の術中にはまっていた。

ビルの1室だけでの展開が見事。それを支えているのは5人の性格の書き分けと役割分担で、途中退席を繰り返す安男も、進行上邪魔になったからとりあえず消えてもらうというのではなく、大いに必然性があってのことだから唸らせられる。逆に言うと、無駄な人物がいないということが嘘くさいのだが、これは難癖。映画というよりは演劇を意識した作りだから当然の帰結だろう。

込み入った話ながら(だからか?)1度観ただけでは齟齬は発見できなかった。脚本がよく練られていることの証だ。肥満の激痩などというトリッキーな展開もあるのだが、これにも笑わせられた。

そして1番のいい点は、ミキの死の真相が自殺から犯罪、そして事故死と推理される過程で、5人それぞれにミキの死がある希望のようなものをもたらすだけでなく、現実としての連帯感まで生んでしまうことだ(ネット上には虚構ながらそれがあったから集まったのだろうから)。

もっともこのミキの死の推理は、意地悪な見方をすると、ミキ信者故の願望があったから導かれたのだということもできるのだが、それは当人たちも自覚していることだし、こちらも自然に、それもよし、という気持ちになっていたのだった。

これだけ楽しめたのだから大満足なのだけど、最後の宍戸錠の出てくる場面と、もう死んでしまって今は存在しない如月ミキの扱い(挿入される映像)がしょぼいのはやはり減点対象かな。

  

2007年 108分 ビスタサイズ 配給:東芝エンタテインメント

監督:佐藤祐市 原作・脚本:古沢良太 企画・プロデューサー:野間清恵 製作:三宅澄二、水野勝博、橋荘一郎、小池武久、出雲幸治、古玉國彦、石井徹、喜多埜裕明、山崎浩一 プロデューサー:望月泰江、井口喜一 エグゼクティブプロデューサー:三宅澄二 撮影:川村明弘 編集:田口拓也 音楽:佐藤直紀 主題歌:ライムライト『キサラギ』 VFXスーパーバイザー:野崎宏二 映像:高梨剣 共同プロデューサー:宮下史之 照明:阿部慶治 録音:島田隆雄 助監督:本間利幸

出演:小栗旬(家元)、ユースケ・サンタマリア(オダ・ユージ)、香川照之(いちご娘)、小出恵介(スネーク)、塚地武雅〈ドランクドラゴン〉(安男)、末永優衣、米本来輝、平野勝美、宍戸錠、酒井香奈子(如月ミキ)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。