机のなかみ

2007年5月5日 土曜日

テアトル新宿 ★★★

■映画に見透かされた気分になる

家庭教師をしてぐーたら暮らしている馬場元(あべこうじ)は、新しく教え子になった女子高生の望月望(鈴木美生)の可愛らしさに舞い上がってしまう。勉強そっちのけで、望に彼氏の有無や好きな男のタイプを訊いたりも。気持ちが暴走してしまって、次の家庭教師先で教え子の藤巻凛(坂本爽)に「俺、恋に落ちるかも」などと言う始末。藤巻の部屋にギターがあるのを見つけると、それを借りて俄練習に励み、望の好きな「ギターの弾ける人」になろうとする。

望への質問に、好きな戦国大名は?と訊いてしまうのは、お笑い芸人あべこうじをそのまま持ってきたのだろうが、演技という目で見るとなんとももの足りない(ちなみに望の答えは長宗我部で、馬場は俺もなんて言う)。ただ彼のこの空気の読めない感じが、後半になってなるほどとうなずかせることになるのだから面白い。

望の志望は、何故か彼女の学力では高望みの向陽大だが、秘かに期するところがあるのか成績も上がってくる。ところが馬場の方には別の興味しかないから、図書館に行く口実でバッティングセンターに連れて行っていいところを見せようとしたりと、いい加減なものだ。望も「私、魅力ないですか」とか「彼女がいる人を好きになるのっていけないことですかね」と馬場の気を引くようなことを時たま言ってはどきまぎさせる。そうはいっても望の父親の栄一郎(内藤トモヤ)は目を光らせているし、イミシン発言の割には望が馬場の話には乗ってこないから、思ってるようには進展しないのだが。

馬場には棚橋美沙(踊子あり)という同棲相手がいて、一緒に買い物をしているところを望に見られてしまう(彼女がいる人という発言はこの場面のあとなのだ)。「古くからお付き合いのある棚橋さん」などと望に紹介してしまったものだから、棚橋は大むくれとなる。

この棚橋のキャラクターが傑出している。トイレのドアを開けっぱなしで紙をとってくれと言うのにはじまって、女性であることをやめてしまったかの言動には馬場もたじたじである(というかそもそも彼はちょっと優柔不断なのだな)。ところが、馬場が本当に望に恋していることを知ると、ふざけるなといいながら泣き出してしまうのだ。この、踊子あり(扱いにくい名前だなー)にはびっくりで、他の役もみてみたくなった。違うキャラでも光ってみえるのなら賞賛ものだ。

合格を確信していた馬場と望だが、望は大学に落ちてしまう。馬場は1人で喋って慰めていたが、泣き出した望に何を勘違いしたのか肩を抱き、服を脱がせ始める。何故かされるままになっている望。帰ってきた父親がドアを開けて入ってきたのは、馬場がちょうど望の下着を剥ぎ取ったところだった。

ここでフィルムがぶれ、テストパターンのようになって、「机のなかみ」というタイトルがまたあらわれる。今までのは馬場の目線だったが、ここからは望の目線で、同じ物語がまったく違った意味合いで、はじめからなぞられていくことになる。

で、後半のを観ると、何のことはない、望が好きなのは馬場などではなく(って、そんなことはもちろんわかってたが)、やはり馬場の教え子(このことは望は知らない)の藤巻なのだった。そして、彼は親友多恵(清浦夏実)の恋人でもあったのだ。

多恵のあけすけで下品(本人がそう言っていた)な話や、望の自慰場面(最初の方でボールペンを気にしていたのはこのせいだったのね)もあって、1幕目以上に本音丸出しの挿話が続くことになる(馬場の下心だったら想像が付くが、女子高生の方はねー)。

そうはいっても、映像的にはあくまでPG-12。言葉ほどにはそんなにいやらしいわけじゃない。でもとにかく、あの1幕目の問題場面に向かって進んでいくのだが、そこに至るまでに、その場面を補足する、藤巻を巡る女の駆け引きと父親の溺愛ぶりが描かれる。

父については、一緒にお風呂に入るのを楽しみにしていて、それを望が断れないでいるといったものだが、駆け引きの方は少し複雑だ。望の本心を知っている多恵は、いちゃいちゃ場面を訊かせたり、藤巻との仲が壊れそうなことを仄めかしたり、あげちゃおうか発言をしたり、そのくせ藤巻のライブには嘘を付いて望を行けなくさせたりしていたのだ。

そうして合格発表日(合格した藤巻と多恵が抱き合って喜んでいるのを望は茫然として見ていた)の夜のあの場面を迎えるのだ。しかも父と藤巻と多恵が揃って、馬場と望のいる部屋に入ってきて……というわけだったのだ。で、この修羅場が何とも恥ずかしい。それは多分私にも下心があるからなんだろうけど(しかしなんだって、こーやって弁解しなきゃいけないんだ)。

ただこのあとにある、望と大学に入った藤巻との対話はよくわからなかった。だいたいあのあとにこういう場が成り立つというのが、不自然と思うのだが、とにかく望は藤巻の態度を問い質していた。藤巻のはっきりしない、ようするに多恵と望の両方から好かれているのだからそのままでいたいという何ともずるい考えを、望は本人の口から確認するのだが、しかしこのあと「藤巻君はそのままでいいの、私が勝手に頑張るだけだから」になってしまっては、何もわからなくなる。いや、こういうことはありそうではあるが。

これだったら、別れることになった棚橋と、洗濯機をどちらが持っていくかという話しているうちに「ごめんね、俺、ミーちゃんのこと大好きなのに浮気して……」と言って棚橋とよりを戻してしまう馬場の方がまだマシのような。ま、だからって馬場がもうよそ見をしないかというと、それはまったくあてにならないのであって、そもそももう望のことは諦めるしかない現実があるからだし、あー、やだ、この映画、もう感想文書きたくないよ。

【メモ】

馬場は望の父から再三「くれぐれも間違いのないように」と釘を刺されるのだが、これってすごいことだよね。

馬場の趣味?はバッティングセンター通い。そこで1番ホームランを打っているというのが自慢のようだ。

棚橋は見かけはあんなだが、うまいカレーを作る。そのカレーを馬場は無断で、自作のものとして望月家に持っいってしまう(この日は望月家もカレーだった)。

修羅場で望にひっぱたかれた多恵は、その理由がわからない。

本当の最後は、1人でバッティングセンターに来た望がホームランを打ち、景品のタオルをもらう場面。

2006年 104分 ビスタサイズ PG-12 配給:アムモ 配給協力:トライネット・エンタテインメント

監督:吉田恵輔 製作:古屋文明、小田泰之 プロデューサー:片山武志、木村俊樹 脚本:吉田恵輔、仁志原了 撮影:山田真也 助監督:立岡直人 音楽:神尾憲一 エンディング曲:クラムボン「THE NEW SONG」
 
出演:あべこうじ(馬場元)、鈴木美生(望月望)、坂本爽(藤巻凛)、清浦夏実(多恵)、踊子あり(棚橋美沙/馬場の同棲相手)、内藤トモヤ(望月栄一郎/望の父)、峯山健治、野木太郎、比嘉愛、三島ゆたか

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