雨の中、自転車で錦糸町へ。楽天地シネマ8-1で『県庁の星』。
いやー、こういうわかりやすい映画はいいな。K県庁エリート職員対二流スーパーのパート。切り口が単純明快。
それだけに、進行は予定通り。もっとも野村聡(織田裕二)が二宮あき(柴咲コウ)と一緒にスーパーで働くという一番安直な結末は避けていて、原作にはない県庁に戻ってからの話がある。
野村が官民交流とやらでスーパーに半年間研修に出されてからの話は、わかりやすいのだが案外目新しいものは少ない。寝具売場をレイアウトしてはいけない理由は説得力が今イチだし、弁当競争や店長室まで在庫の山というあたりは大げさすぎ。消防の口頭試問でダメ店長(井川比佐志)が活躍するのもみえみえの演出だ。そもそもそこまでちゃんと答えなくてもいいんじゃないかしら。
とにかくこのスーパーのダメさぶりは尋常じゃないから、二宮から野村が学ぶっていうのがなー。マニュアルがなくて野村がびっくりするのは当然で、今時二流でもチェーンスーパーだったらあるでしょう。マニュアル通りだからダメっていうのならわかるんだが。んで、県庁にはマニュアルがあるんだ? それは知りませんでした。
他にも本当かと思うところがあって、なかでも一番気になるのが県議会での野村の発言だ。議会の仕組みなどよく知らないが、一職員に発言権などあるのだろうか。それに議決後に言い出すというのがなー。野村が失意の中、酔って二宮の自宅に押しかけるというのも? それくらいはキャリア公務員の野村のこと故ちゃんと前もってリサーチしていたのかもしれないが、説明抜きではストーカーと間違えられかねませんぜ。
女子アナあがりの知事(酒井和歌子)の狸ぶりが議長(石坂浩二)以上だったというのは、なかなでした。前向きに検討するというのは何もしないことだと、まあこれ自体はもう常識なんだが、野村と知事に最初と最後で言わせているのは効いている。
野村がスーパーで学んだことは、「素直に謝る、素直に聞く、仲間が必要」だそうですよ。ちゃんちゃん♪
食事のあと、楽天地シネマ8-7で『ミュンヘン』(Munich)。
1972年9月5日、ミュンヘン・オリンピック開催中の、パレスチナゲリラ「黒い九月」によるイスラエル選手団襲撃事件……そういえばそんなことがあった。
忘れかけていたのは私が平和ボケした日本人だという証拠みたいなもので、事件には続きがあったのだ。激怒したモサド(イスラエル機密情報機関)が、秘密裏に暗殺チームを編成し首謀者の殺害を企てたというのだ。映画は、そのリーダーとなったアヴナー(エリック・バナ)が仲間と殺害を実行していく様を、ドキュメンタリーのように綴っていく。
これが執拗で、凡庸であれば飽きてしまうところだが、スピルバーグはさすがに164分の長さを感じさせない。どころか、暗殺を続けていくうちに自分たちが狙われる恐怖を、じわりと呼び出す。それに、この暗殺の連鎖は、パレスチナとユダヤの位置関係の縮図であるわけだし。
ただしこの映画に関する限り、出発点はあくまでミュンヘンで、そのことは繰り返される映像でもわかる。つまりアヴナーの苦悩はそこから始まったのだと。それがユダヤ人であるスピルバーグの限界だろうか。
いや、こういう見方をしてしまうことが、すでに暗殺の連鎖と同じ構図なのかもしれない。体制内批判ではあっても、ここはスピルバーグの勇気を買うべきだろう。ラスト、貿易センタービルが遠景として左端に映しこまれていた。
時間は早いのだが雨が気になるので、そのまま江東区文化センターへ行ってしまうことにした。でも途中で上がってくれる。上映までの50分は本を読むことに。
この催しは、朝日新聞江東ブロック映画上映会という名前のもので、一月前にFAXで申し込んでおいたもの。あいにくの雨で、入りは1/3程度(どのくらい申し込みがあったのかはわからないが)。
『皇帝ペンギン』(La Marche de L’ Empereur)。日本語吹替版。
記録映画だが、父、母、子のナレーションでみせるという構成。擬人化には無理があるけれど、それほどおせっかいではない。
これを観ると、ペンギンがいかに不器用な生き物であるかがわかる。安全な繁殖場所を求めてというけれど、そこに行くまでと、卵が生まれて雌が何日もかけて餌を取りに行って帰ってくる(雄が卵を暖めて孵す)ことを考えると、繁殖地への移動は危険の方が多いとしか思えないのだ。
暖めている卵が何かの拍子に体から離れ、回収に手間取っていると、寒さでひび割れてしまうカットは衝撃的だ。他にも鳥の餌食になるとわかっていながら、何もしようとしない親達とか……。
とにかくあのヨチヨチ歩き(で、よく転ぶんだなー)でわかるように、陸地では為す術がないという感じ。けれど、海中には天敵のあざらしもいるし……ってことで陸で卵を孵すようになったのだろうけど、極地の寒さは雛には(親にも、か)相当厳しいということがよくわかりました。
うーむ、生きるということは実にたいへんなことなのダなぁ。
江東区文化センターは、前に何の用で来たか忘れてしまったが、今となっては椅子などの設備が安っぽい。映画を上映するには、ホールの暗さが足らないし、ピントが甘い。しかもフレームが右に動きだし、最大で1/9も白い部分が、10分ほどとはいえズレて映写されたのにはまいった。設備ではなく、映写技師の腕?
実は今日の夕方、長女がスペインから戻ったのだが、VIP?の観光案内も仰せつかっているらしく、泊まりはホテルニューオータニなのだと。映画をとりやめて会いに行った家人が、豪華な部屋に驚いていた(貧乏生活がバレてしまうな)。
今回は2日に大阪に移動し、そのままスペインに帰るので会えないが、3月と4月にも来る予定があるとのこと。
しかし、バイトもどきの人間に日本に何度も出張させたり、VIPの案内をさせるかしらね。よくわからん会社だ。 |